ISOコンサルタント/SFSS理事
宮田芳男
紅麹・自動車関連の形式認定問題等 食品・品質関連の不正・不祥事が絶えない。
マネジメントシステム関連の有効性を目指す動きと課題について考える。
品質マネジメントシステムISO9001は2000年ころから認証活動が本格化したが、初期のシステムはISO認証のため様々な仕組みを付加し、非常に重いものであった。マニュアルは100ページ以上、維持・運用・教育に苦闘していたが、認証組織で食中毒等の不正・不祥事が絶えなかった。
2008年経済産業省が「マネジメントシステム規格認証制度の信頼性確保のためのガイドライン」でシステムの有効性(不正・不祥事の防止他、パフォーマンスに着目した審査の徹底、制度を社会により分かりやすいものとすること)を求め、 国際的組織(ISO,IAF)にも働きかけた。2015年ISO規格改訂では“リスク及び機会への取組み(未然防止)”“事業との統合”が要求され、“HLS (High-Level Structure) ”で全てのISO規格が同じ項番・構造で統一された。東京オリンピックを契機とした食品衛生法改正では 原則としてすべての食品等事業者に一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施が要求され、衛生監視員による指導が2020年からはじまった。HACCPの制度化によりISO22000、FSSC22000の認証が急増。FSSC22000では毎年のように追加要求事項が改訂されている。
食品安全マネジメントシステム・HACCP実務での取組
ISO事務局(2002年~):ISO9001、ISO14001、プライバシーマーク認証取得。マネジメントシステムの構築は実際に運用する社員への周知・ 教育がポイント。わかりやすいマニュアル・2次文書・記録を心掛けた。
審査員:規格の真の意図が現状の仕組みに反映されているかどうか問題の有無を確認する。
“受審組織にはISO規格とは関係なく仕事の仕組みが存在して運営されているという考え方に立つ”
認証は急増したが、食品会社の勤務経験が資格の要件で食品安全審査員は不足しており非常に忙しい。
ピーク時は2件/週、常時5~6件の審査をかかえ北海道から沖縄まで全国を駆け回るが、観光の余裕はない。FSSCはISO22000+ ISO/TS22002-1で膨大な規格要求事項。審査準備・審査報告書に追われる。
審査員を増やしスキルアップすることが今後の課題。
コンサルタント:マニュアルには規格要求事項に対応する具体的な運用・管理内容を記載する。
初期の重いマネジメントシステムから脱却する契機がISO2015年の規格大改訂であり、“規格は何をすべきかを示しているのみでどうやるかは 会社自身が決めるように設計されている”ことを基本にマニュアル・2次文書・記録を整備した。その結果読めばわかるマニュアル(十数ページ) となり、社内各部署・社員への周知・教育・運用が効率化された。
・運用効率化の事例:関連項目をまとめる 課題・期待・リスク機会(4.1 4.2 6.1)⇒目標管理(6.2)
個別の要求事項だが、組織の業務の視点からまとめることができる。
・訓練を要求されている関連要求項目をまとめて実施する。8.3 トレーサビリティシステム 8.5.1.5.2 フローダイアグラムの現場確認 8.9.5 回収/リコール 8.4.2 緊急事態及びインシデントの処理
・統合マネジメントシステム 統合マニュアル 統合審査
規格別の事務局・マニュアル・運用(内部監査・マネジメントレビュー)を統合すれば、大幅に効率化できる。
審査工数も10~15%削減される。
参考文献:「ISO審査員心得帖」 日本規格協会2004
「ISO運用の大誤解を斬る」 超ISO企業研究会 日科技連 2018