
野良猫食情報研究所
畝山智香子
主に海外で超加工食品(UPF)を規制しようという動きが活発になっています。現代人の食事の問題、特に先進国での肥満の増加をUPFが原因だとしてそれを削減することが解決法だという主張が、欧州ではWHOを中心にする栄養政策策定者を中心に、米国ではRFK. Jrに率いられたMAHA運動の中で大きくなっています。ただしその科学的根拠は薄弱で、栄養の専門家からは批判されています。
UPFはブラジルのCarlos A Monteiro教授らが考案したNOVA分類とよばれる食品分類法でNOVA 4に分類される、「企業が利益をあげるために、安価な原材料や添加物を使って本物の食品や料理したての食事にとってかわるもの」とされるものです1)。NOVA分類は食品を加工の程度で分類したと説明されますが、加工の程度だけではなく加工の意図が分類を決めるとされ、例えば同じレシピでできていても家庭で手作りしたパンやお菓子はUPFではなく、工場で作られて販売されているパンやお菓子はUPFと分類されます。他に、「原材料に5つ以上の成分が含まれる食品」や「プラスチック包装されていて家庭にはない成分を含む食品」などと説明される場合もあります。こうしたものばかりたくさん食べている人には肥満などの食生活に関連する病気が多い、と主張されます。食べやすくて美味しい食品が簡単に入手できるために食べすぎてしまう、それは消費者の責任ではなく企業による圧倒的マーケティングが原因なので規制すべきである、というわけです。
しかし実際に疫学研究で人々の食事を調査する場合、食べたものがどうやって作られたものなのかは尋ねていないため、UPFかどうかは研究者の推定でしかない場合が多く、UPFの定義の曖昧さもあって同じ食品であっても人によって分類が異なるなど、研究の信頼性には常に疑問が提示されてきました。例えば日本人にとって身近な食品である豆腐が、研究者によって「避けるべきジャンクフード」であるUPFと分類されたり2)、「望ましい食事の一部」である最小限に加工された食品に分類されたりしています3)。研究の基本となる摂取量推定が信頼できないものである以上、摂取量が何かと関連するという結果は信頼できないままです。少なくとも豆腐がUPFなので悪いもので、一方牛肉は「未加工」なのでどんどん食べるべき、という論文2)の主張には全く同意できませんし一般的な栄養に関するコンセンサスともかけ離れています。これまでのところUPFという概念を導入することで、カロリーの摂り過ぎのような既に栄養学で説明できる以上のことがわかるといったメリットは示されていません。
生鮮食品はそのままでは傷みやすいので加工することによって保管や輸送が容易になりより広く多くの人に届けられるようになり食料安全保障が向上してきました。またキャッサバのシアン化合物の除去や牛乳の殺菌処理のように食品の安全性にとっても加工は不可欠な工程です。その「加工」を一律に全て悪いことだと主張することは事実ではないだけではなく、殺菌しない牛乳や乳製品の摂取を推奨することで食中毒の原因ともなっています。
そしてMonteiro教授のNOVA分類をもとにしたUPF規制を国の栄養政策として導入して10年以上経つブラジルでは、肥満が減るどころか先進国以上の速さで増加している事実(図)だけでもUPF規制を推進する理由はないはずです。むしろこれだけ科学的根拠も現実世界での実績もないNOVA分類による規制が何故世界的に推進されるのか、実際に肥満率の少ない日本のような国が全く参考にされないのはなぜなのかのほうが疑問です。

1). Carlos A Monteiro et al., Ultra-processed foods and human health: the main thesis and the evidence, The Lancet Vol. 406, No. 10520, P2667-2684, 2025
2). Mario Estévez et al., Ultra‐processed vegan foods: Healthy alternatives to animal‐source foods or avoidable junk? Journal of Food Science, Vol 89(11),7008-7021, 2024
3). Shoko Hamano et al., Ultra-processed foods cause weight gain and increased energy intake associated with reduced chewing frequency: A randomized, open-label, crossover study, Diabetes, Obesity and Metabolism Vol 26(11), 5431-5443, 2024


