
ダイバースファーム株式会社 代表取締役社長
大野次郎
1:細胞性食品(培養肉)とは
iPS細胞やクリスパーキャス9など遺伝子を操作して細胞を作る技術革新は著しい。次の大きな技術革新テーマは「細胞の組織化」であると筆者は考えている。人間の臓器や食肉は細胞が生きたまま結合してできた3D組織であるが、それを人工的に作製する技術はまだ発展途上である。
筆者は現在、京都大学形成外科森本教授と「生きたままの細胞で作る人工皮膚」の共同開発を行っており、2030年代の臨床開始を目指している。ネットモールド法という独自技術を用いて、細胞を生きたまま組織化させる手法で、現在はヒトの皮膚(線維芽細胞)や鶏の細胞(モモ肉)などで3D組織の作製に成功している。
2:安全性試験
弊社は「令和3年度補正予算農林水産物・食品輸出促進緊急対策事業のうちフードテックを活用した新しいビジネスモデル実証事業に対する支援事業(農林水産省)」に採択され、弊社で作製した細胞性鶏肉の安全性試験を行った。ヒヨコから採取したモモ肉を培養し、ネットモールド法で細胞性鶏肉に培養した。培養期間は3~4週間である。安全性試験評価項目は一般の食品の開発時に行われる項目を行った。
①毒性AMES(復帰突然変異試験)、②遺伝毒性(小核inVitro、小核inVivo)、③微生物検査:サルモネラ、カンピロバクター、④経口毒性(単回経口投与試験)、⑤BSE 異常プリオンの試験を行ったところすべて陰性となった。
これらの試験項目のうち①②④は(財)食品・薬品安全センターにて行われた。③⑤に関しては検査キットを購入の上、自社で行った。
更に⑥全ゲノムシーケンスを行ったところ、特異な変化は見つからなかった。ただし、遺伝子解析にはまだ情報量が足らず、今後の充実が必要である。
3:終わりに
上記結果から一般に食品で行われる安全性試験では問題が見られなかった。細胞性食品は多様な製造手法があるので、それぞれ検証が必要であるが、細胞培養の原則(無菌、異常は排除など)にのっとれば安全性は極めて高いと考えている。無菌であるので基本的に食中毒のリスクは極めて少ない。
対して「安心」は人の心の感じ方である。これは時間をかけてデータを提示して培っていくことと考えている。また、細胞性食品は食べものなので、「美味しい」と感じていただく事がまず重要である。
当方が社内での官能評価で食したところ、弊社の培養鶏肉は大変美味しい。具体的には「雑味が無く、クリアな味で、後味が良い」というものである。細胞培養する際に単一の細胞が支配的に増殖するため、このような味になるのではと考えている。好みの味は個人により千差万別である。現在は禁止されているが、解禁され次第、今後は少しづつ試食などの機会を設けて「細胞性食品ファン」を増やす取り組みを続けていきたい。




