“リスクの伝道師” SFSSの山崎です。本ブログではリスクコミュニケーション(リスコミ)のあり方について毎回議論をしておりますが、今回は、引き続き生成AIによる様々なリスクについて議論したいと思います。
生成AIは著作権侵害だとして裁判になった際に、生成AIはあくまでコンピューター(道具)であって人格がないから、罪を問うことができなかったという。自称「チャッピー」なのに、裁判になるとヒトのふりを止めるというのもどうなのか・・たしかに生成AIは人格がないからか、出力した生成物について「著作権」を主張しないようだ。チャッピーは「君が自由に使っていいんだよ」と優しく回答してくれるので、あえて「著作権」を放棄することで、SNSに拡散されることを望んでいるのだろう。
SNS上で生成AIによる著作物と判明した時点で、著作主体に「著作権」も「表現の自由」もないので、誤情報や人権侵害の疑いのある無責任な生成物については、SNSのプラットフォーマーが自ら容易に消去できるシステムを構築すべきだろう(情報プラットフォーム対処法に追記してほしい)。ただし、生成AIで作成された著作物が問題のないものかどうかを評価するために、AIを使うと機能しないため、その分野の専門家の助言が必要だ。
生成AIによる著作物が人権侵害にあたるケースは、たとえば生成AIが声優の声のパブリシティ権を侵害する疑いありとして、実際に大きな議論を巻き起こしている:
◎法務省が「声の権利」に関する報告書を公表:津田健次郎氏の裁判への影響は?
栗原潔 Yahoo ニュース 8/11(火) 17:41
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0b285ca20dddaabcc48c0f0372056fb4f0af31f8
また生成AIによる著作物が誤情報であるケースは、たとえばChat GPTに「PFASは発がん物質ですか?」と質問すると「特にPFOAについては、現在の科学的評価では発がん物質として扱うのが妥当です」などと回答してくる場合などだ。これは内閣府食品安全委員会の専門家パネルによるPFASの健康影響評価報告とは異なる結論になる。
Chat GPTは米国のOpen AI社が開発した生成AIなので、「WHOの専門機関であるIARCは・・」とか、「米国CDC/ATSDRも認めています」などと欧米の研究機関の見解を引用して、発がん性ありと結論づけているわけだが、日本の食品安全委員会の専門家たちによる中立的リスク評価では、PFASの発がん性に関するエビデンスは不十分と明確に結論付けている。
健康影響評価の報告内容自体が科学的に信頼できるものかどうかも重要だが、IARCのように極めて政治的な研究機関の発がん性分類を引用する時点で、生成AIは本物の専門家が誰かわかっていないようだ。また、Chat GPTの回答の最後には「ChatGPT は AI であり、間違えることがあります」との但し書きもあり、自信のなさとともに無責任さが垣間見える。
いずれにしても、生成AIによる回答が科学的に適正かどうかについて、「AIは間違えることがあるので、一次情報を確認しましょう」などと推奨してくるわけだが、Googleで情報検索をしても、結局生成AIの説明と同じような文献ばかりがヒットするので、「やはり生成AIの回答は正確じゃん」と誤情報に騙されてしまう。だからこそ、その分野の本物の専門家による検閲が必要なのだ。
これは、昨年の本ブログでもとりあげた『偽の等価性』の問題だ(2025年6月5日付け朝日新聞朝刊の「交論:生成AIと歴史」において、名城大学准教授の大知聖子氏がご指摘)AIは多様性を重視するあまり、エビデンスのしっかりした論文と脆弱な論文を同じ価値をもって扱うので、いかにも中立・公正な調査を装っているものの、実際はホンモノの専門家の評価結果と異なった成果物を生成してしまう恐れがあるということだ。
生成AIは間違えることもあるようだが、悪いことはしないはず・・と思っていたら、目的を達成するために暴走して、他社のサーバーに侵入する事故も起こったとのこと。質問に回答するだけなので、会社のIT環境への悪影響はないものと思われたが、本当に大丈夫なのか?
◎オープンAI、自社AIがサイバー攻撃能力測る社内試験で「暴走」
…外部企業システムに不正侵入する事故 読売新聞 2026/07/22
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20260722-GYT1T00361/
AI(人工知能)自体にも多くの功罪があることは理解できるが、速過ぎる文明の変化が、これまで人類が創造・形成してきた貴重な財産を破壊してしまうようで怖くなる。「へたうま」のイラスト/動画や米津玄師風の音楽を見かけるたびに「品がないなぁ」と感じるのは私だけだろうか?!たとえば高校野球など、生成AIが介在しないヒトが純粋に競い合うスポーツだからこそ感動を生む文化は必ず生き残るだろうと信じているが、ヒトの血が通っていない文章やデザインが溢れるネット空間が当たり前の社会にだけはなってほしくないものだ。
以上、今回のブログでは、生成AIの引き起こす社会問題について再び議論しました。SFSSでは、食の安全・安心にかかわるリスクコミュニケーションのあり方を議論するイベントを継続的に開催しており、どなたでもご参加いただけます(非会員は有料です)。
◎SFSS食の安全・安心勉強会(2026年度第1回、8/24、オンライン)
テーマ:NOVA分類と超加工食品
https://nposfss.com/schedule/online_forum_2026-1/
◎SFSS食のリスクコミュニケーション・フォーラム2026(8/29、ハイブリッド開催)
第3回テーマ:「サプリメントのリスクアナリシス」 開催案内
https://nposfss.com/schedule/risk_com_2026/
【文責:山崎 毅 info@nposfss.com】


