「食の安心」のために「リスクコミュニケーション」が重要な本当の理由

[2013年7月7日日曜日]

食品のリスクコミュニケーションとは、「リスクに関係する人々の間で、食品のリスクに関する情報や意見を相互に交換すること」と定義されているi。 さらに、「有害性やおこる確率がどの程度ならば受け入れ可能で、そのレベルまでリスクを下げるためにどうすれば良いかについて関係者の理解を深め、共に考えようというもの」との補足もあるが、要はみんなでディベートをやれば、大半の参加者が許容できるリスクについて納得するよね、ということである。

実は、「みんなでしっかり議論する(情報や意見を交換する)」というところが非常に重要なのだが、どうもここを見落として、行政機関や食品事業者が一般消費者にむけて一方向で情報伝達することを「リスクコミュニケーション」と勘違いしておられないだろうか?一方向の情報伝達をいま風に言うと、「上から目線」の押し売り情報になってしまうし、情報発信者への信頼は受け取る消費者によって千差万別なので、「行政は信用できないよ」「民間企業は情報を隠している」などという発言をされる一般消費者には、ほとんど無効と思ってよい。

当NPOも、ここ3年の間に「食の安全と安心フォーラム」など、一般市民に食のリスクを正しく理解していただくための学術啓発活動を地道に継続している(SFSSホームページを参照のことii)。その際、イベント後のアンケートを集計すると、ほぼ9割の参加者がリスクの健康影響について正しく理解いただけるという共通の現象を認める。

すなわち、行政も民間企業もアカデミアも市民も一緒の土俵でディベートをすること(「リスコミ・バトルロイヤル」)で、多くの参加者が「正しい食のリスク認知」という共通のゴールにたどり着くのである。一般消費者は、信頼できない相手から情報を一方的に聞かされる受け身の状態では、いくら情報が正しいものでも疑念をいだくが、自分自身が議論に参加することで、その参画意識と主体性から、自分たちが生み出した成果としてとらえるので、大半の消費者が「正しいリスク認知」に導かれるのであろう。

それでもほぼ10%の残りの参加者は、ある種のイデオロギーや利益団体の主義主張を押し通すために「リスク認知のバイアス」のまま終わるわけだが、それはそれで仕方がないと考えている。なぜなら、最終的には消費者自身が「食のリスク認知」を自己責任のもとに判断して、食品を選ぶからである。まずは9割の参加者を「正しいリスク認知」に導き、残り1割の参加者には、どうも自分たちだけ違っているようだと気づいてもらえるよう、地道にリスクコミュニケーションを繰り返すことが肝要であろう。

 NPO食の安全と安心を科学する会では、今後も「食の安心」につながるリスクコミュニケーション活動を展開していくので、ご支援をお願いしたい。


i厚労省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/riskcom/01.html

iiSFSSホームページ http://www.nposfss.com/

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