「化学物質や食品添加物を削減した給食を提供する(有機食材を推奨)」➡フェイクニュース(レベル4)
~参政党政策をファクトチェック


明日7月20日(日)に投開票となる第27回参議院選挙において、食品安全に関わる政策を打ち出している政党がいくつかある中で、顕著にSNSでの情報拡散がされている標題の政策提言についてファクトチェックを実施したので、以下をご一読いただきたい。

なお、SFSSのファクトチェック運営方針/判定レーティングは、以下をご参照のこと
➡ https://nposfss.com/fact-check/02_operation_policy/

―――――――――――――――――――――――

<疑義言説>
参政党が公約として掲げている「3つの重点政策」の2番目として「食と健康・環境保全」があり、その具体的な政策において「遺伝子組み換え食品や、不必要な食品添加物等は成長期の子供たちにとって将来どのような影響が出てくるか不明確なため、それらを極力減らした有機食材を活用する」などと掲げている➡こちら

<ファクトチェック判定> レベル4(フェイクニュース)

なお、具体的な政策説明の抜粋は以下のとおりだ:

・農家への支援だけでなく、消費者への価格補助で有機・自然栽培促進をさらに加速
・学校給食の有機食材使用義務化を加速。
・子供たちの心身の健康と、地域の豊かな発展を目指し、地産地消で質の高い学校給食を提供。食材には、地元食材を取り入れ、遺伝子組み換え食品や、不必要な食品添加物等は成長期の子供たちにとって将来どのような影響が出てくるか不明確なため、それらを極力減らした有機食材を活用する。
・化学物質や食品添加物を削減した給食を提供する(有機食材を推奨)。
・国が安全性を認めていても、どのような添加物・遺伝子組換え等が使用されているかの情報を得た上で購入したいという消費者のニーズに対応するために、原産者、加工者、使用農薬、添加物、ホルモン剤、抗生物質、遺伝子組み換えやゲノム編集、放射線照射米等の情報を正確に提供するため、食品表示法等を改正。
・遺伝子組換えについては比率も明示し、ゲノム編集、放射線照射の有無は必須とする。
・「無添加」表示については、国民が求めている無添加の定義を勘案し、その表示を可とする。
・日本の食文化を無視した昆虫食や培養肉より、和食の良さを発信し米食を推進

―――――――――――――――――――――――

<エビデンスチェック>

 価値観として、添加物を使用しない食品や有機栽培の野菜等を推奨することは、「食の安心」マターとして政策に掲げても問題ないだろう。しかし、「遺伝子組み換え食品や、不必要な食品添加物等は成長期の子供たちにとって将来どのような影響が出てくるか不明確なため、それらを極力減らした有機食材を活用する」という主張は科学的に誤りだ。遺伝子組み換え食品や食品添加物により食品安全の問題が発生する可能性を示唆しているが、食品安全の専門家たちはこれを明確に否定している。

また、従来の農薬を適正に使用した農作物と比較したときに、有機野菜の安全性が高いという科学的根拠はない。むしろ高温多湿の日本では、オーガニック野菜を仕入れた段階で害虫や微生物(土壌細菌やカビ)に汚染され、食品衛生上の問題から、「安全食品」とはほど遠い場合があることに要注意だ。

国立医薬品食品衛生研究所客員研究員の畝山智香子先生が、有機(オーガニック)給食の方が安全とは言えず、とくに学校給食に適用することで子供たちをカビ毒などによる健康リスクにさらすことは不適切、と警鐘を鳴らしている:

有機(オーガニック)給食と安全性を考える(前編)-オーガニック特有のリスク
 畝山智香子 FOOCOM 2025年2月13日
有機(オーガニック)給食と安全性を考える(後編)-有機農業で使用される農薬
 
畝山智香子 FOOCOM 2025年2月13日

また、東京大学名誉教授で食の信頼向上をめざす会代表の唐木英明先生は、このような食品安全に関わる誤情報により消費者の不安を煽ることで、世の中の分断を助長し自分たちの政策を正当化していく政党の姿勢に苦言を呈している:

◎消費者の「食の不安」を政治利用する参政党、れいわ
 …野党の政策が非科学的であるこれだけの理由!与党が今、すべきこととは?
 唐木英明( 東京大学名誉教授)
 Wedge ONLINE 2025年7月16日
 https://wedge.ismedia.jp/articles/-/38287

また、食料安全保障の観点からも、将来必要な栄養源として期待されるフードテック(遺伝子組換え食品、培養肉、昆虫食など)の開発施策を中止すべきという主張も不可解だ。食のリスク評価を綿密に行ったうえで安全が確認されれば、健康被害は起こりえないと専門家も評価しており、伝統食材でなければ安全は確保できないというリスク誤認があるようだ。

<疑義言説に関する真偽検証の結論> レベル4(フェイクニュース)

上述のエビデンスチェックにおいて、参政党の具体的な食品安全に関わる政策:「遺伝子組み換え食品や、不必要な食品添加物等は成長期の子供たちにとって将来どのような影響が出てくるか不明確なため、それらを極力減らした有機食材を活用する」は、科学的根拠を欠いており誤りである。遺伝子組み換え食品、食品添加物、残留農薬が制御された従来農法の野菜などについて、日本国内において食品安全上の問題は生じていないと専門家は評価している。しかも、明らかに意図的に消費者の不安を煽ることで、自らの政策の正当性を主張している点で誤情報というよりは、偽情報=レベル4(フェイクニュース)との評価判定となった。

―――――――――――――――――――――――

なお、「情報を正確に提供するため、食品表示法等を改正」という政策もかかげておられるが、すでにほとんどの項目が表示義務化されているところだ。また、市販の食品にほとんど残留しないような項目(使用農薬・ホルモン剤・抗生物質・放射線照射米など)にまで表示を義務付けるのは、実行可能性の点で無理である(違反を検証できない)。それよりも、消費者の多様な価値観を許容して、消費者自身が食品選択を合理的に行えるようにしたいのであれば、「有機栽培」「無添加」「クルテンフリー」など、特定の価値観を推奨することと矛盾していないだろうか。

食品安全に関わる政策をかかげている政党は諸派も含めて複数あるが、結局のところ、食品添加物・残留農薬・遺伝子組換え食品/ゲノム編集食品・放射能汚染等に関して、食品安全上の問題があるとの疑念をもとに消費者市民の不安を必要以上に煽っているようだ。食品安全に関わるリスクリテラシー向上のためにも、拙著『食の安全の落とし穴~最強の専門家13人が解き明かす真実』における食のリスクに関するQ&Aをご参照いただき、食品安全に関わる政策の再考を促したい。

(初稿:2025年7月19日15:00)
*SFSSファクトチェックの運営方針・判定基準はこちら
*SFSSの組織概要はこちら

【文責:山崎 毅 info@nposfss.com

タイトルとURLをコピーしました