【第1回テーマ】 「国際的視野におけるリスコミのあり方」
【開催日程】2015年4月26日(日)13:00~17:40 (最大延長~18:00)
【開催場所】東京大学農学部フードサイエンス棟 中島董一郎記念ホール
【主催】 NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)
【共催】 一般財団法人社会文化研究センター
【後援】 消費者庁、東京大学大学院農学生命科学研究科食の安全研究センター
【参加費】 3,000円/回
3人の先生方より、食のリスクコミュニケーションのあり方について、国際的な視野に立ったテーマでわかりやすくご講演いただきました。また、パネルディスカッションでは会場の参加者からのご質問に対して、 演者の先生方からひとつずつ丁寧にご回答いただき、有意義な議論が展開されました。
吉井 正武 氏
高橋 梯二 先生
藤岡 典夫 先生
広田 鉄磨 先生
パネル・ディスカッション
【プログラム】
13:00~13:10 開会の挨拶 吉井 正武 (一般財団法人社会文化研究センター)
13:10~14:10 『グローバル化における日本の食品安全』 高橋 梯二 (東京大学農学生命科学研究科非常勤講師)
14:10~15:10 『食品安全における「適切な保護の水準」の政策的意義』 藤岡 典夫 (農林水産政策研究所)
15:10~15:30 休憩
15:30~16:30 『フードディフェンス上のリスクが なぜ極大化して伝えられるのか』 広田 鉄磨 (ネスレ日本)
16:30~17:40 パネルディスカッション 進行:山崎 毅(SFSS)、パネラー:各講師
*各ご講演の要約とレジュメは以下のとおりです:
① 『グローバル化における日本の食品安全』
高橋 梯二(東京大学農学生命科学研究科非常勤講師)
<高橋先生レジュメPDF/577KB>
2000年以降世界各国では、食品安全措置が強化・充実され、また、グローバル化が進んでいるが、日本はこのようなグローバル化にどのように対応しているかを分析してみたい。日本は世界でも最も安全な国といわれているがどのような根拠があるのか。また、グローバル化によって日本の食品安全は脅かされるというのは果たしてそうなのか。制度的な面では日本は他の先進国に大きく後れを取っているのではないか。そうでもあるにもかかわらず、日本の食品安全は高度に確保されているように思えるが、これはどうしてかなどについて考えてみたい。この分析の中で食の安全における科学と社会文化の役割が見えてくることを期待したい。
② 『食品安全における「適切な保護の水準」の政策的意義』
藤岡 典夫(農林水産政策研究所)
<藤岡先生レジュメPDF/287KB>
<藤岡先生補足PDF/123KB>
本来、食の安全には「どの程度のリスクを受け容れるか」という非科学的要素(価値判断)が入らざるを得ず、安全対策は「受け容れられるリスクの水準」=「適切な保護の水準」を達成するように決定されるべきものである。ところが、食の安全は専ら科学的に、かつゼロリスクになるように決定されるとの誤解が多く、しかも放射性物質の基準値の場合のように国がこのような誤解を正そうとしていないことは、さまざまな問題を生じさせる。「適切な保護の水準」は、合理的な食品安全政策とするためのキーワードであるが、わが国の食品安全法制上、明確な位置づけはない。WTO協定等における「適切な保護の水準」についての国際的ルールを確認し、食品以外のリスクに関する議論も参考にしつつ、食品安全政策・制度における「適切な保護の水準」概念の明確化の必要性とその意義を考える。
③ 『フードディフェンス上のリスクが なぜ極大化して伝えられるのか』
広田 鉄磨(ネスレ日本)
<広田先生レジュメPDF/913KB>
2008年、中国天洋食品でのメタミドホス混入事件をうけ、過去7年ほどで日本では安全カメラと呼称される録画カメラが大量に食品工場に導入されたが、このような展開を見せているのは日本と中国に限定される。なぜ日本でこのような展開になったのか、その謎を紐どいてみたい。また合わせて、録画カメラには実際にフードディフェンス犯罪に対する抑止効果があるのかについても考察をおこなう。現在、FDA、WHO、PAS96などの参照文書があるが、すべてに一長一短があり、その単一に依存して日本のフードディフェンスを構築していくことは危険である。ひとつひとつの文書の長所短所を解きほぐしながら、今後日本が模索するであろうフードディフェンスのあるべき姿を参加者とともに考えてみたい。
なお、参加者アンケートの集計結果等は今後の活動報告にて掲載してまいります。
(文責:山崎 毅)