キユーピー株式会社

執行役員 広報・CSR本部長
森 佳光

■グループ理念に基づいた食資源の有効活用

 キユーピーは、1919年(大正8年)の創業以来、「良い商品は良い原料からしか生まれない」という原料に対する強いこだわりを持ち続け、食品にたずさわる者の心構えとして「正直」「誠実」を愚直に守り続けてきました。創始者 中島董一郎(なかしま とういちろう)のこの教えと、日本人の体格向上への願いを込めた「キユーピー マヨネーズ」を1925年に発売して以来、「食を通じて社会に貢献する」という精神を受け継ぎ、私たちキユーピーグループは、事業活動にとどまらず、社会や地球環境への貢献に向けたさまざまな活動に取り組んでいます。

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 2019年に、私たちはこれまでのCSR活動に持続可能性の考え方をより一層関連づけ、「CSRの基本的な考え方」を見直しました:
 また、キユーピーグループの強みやユニークさに、社会課題の解決に向けた国際的な目標であるSDGsを結びつけ、キユーピーグループが与える社会への影響度とステークホルダーからの期待度を考慮して、「CSRの重点課題」を設定しました。

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 これらの根源にあるのが、「社是・社訓」を基本とした「キユーピーグループの経営理念(https://www.kewpie.co.jp/company/corp/philosophy/index.html)であり、キユーピーグループの活動を支えていただいているステークホルダーの皆さまから最も信頼していただけるよう私たちの姿勢を表わした「グループ規範」(https://www.kewpie.co.jp/company/corp/koudoukihan/info_10_main.html)です。この規範では「地球環境への貢献」を掲げ、自然の恵みに感謝し、資源の有効活用と環境保全に真摯に取り組むことで、持続可能な社会を次世代へつないでいきます。

 キユーピーグループの事業活動は、原材料をはじめとした豊かな自然の恵みのもとに成り立っています。工場で発生する副産物や廃棄物は発生抑制を第一としたうえで、食品残渣の有効利用に取り組んでいます。また製法や容器包装の改良による賞味期間延長を通じて家庭内ストックの賞味期限切れによる廃棄を抑制するなど、食品ロス削減に努めています。
 事例をお話すると、「キユーピー マヨネーズ」では主原料として「卵黄」を使っています。日本で生産される鶏卵の約10%(約25万トン)をキユーピーグループでは取り扱っており、自社グループで割卵しています。この際に発生する「卵殻」を捨てることなく有効活用しています。土壌改良材として田畑に施肥したり、カルシウム強化原料として食品に、また石灰の代替としてチョークに利用するなど、卵殻の再資源化率100%を実現しています。
 一方、商品としても、保管流通時の期限切迫による廃棄、家庭での賞味期限切れによる廃棄を減らすため賞味期間の延長に取り組んでいます。
 さらに消費期限を「年月表示」にすることで、流通における管理の簡素化のメリットと共に廃棄ロスを抑制する取り組みをレトルト介護食品で今秋から始めました。また、私たちのグループでは沢山の野菜原料を使用してサラダや惣菜を製造しています。この加工工程で発生する残渣(例えばキャベツの外葉や芯、ジャガイモの皮など)を「未利用資源」と位置付け、その機能成分や栄養素を活かして乳牛や養豚の飼料に、また堆肥として利用しています。このような取り組みは食品としての資源循環「食のループ化」とも言われています。

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 食品ロスを広義にとらえると、川上である「食糧生産」の現場で発生するロス(例えば摘果や選別によるもの)から、川下である流通・消費段階で発生するロス(売れ残り・期限切れや食べ残し)に渡る様々な過程で食資源のロスが発生しています。

 一方で日本国内の耕作地には限りがあり、地球規模で見れば将来に渡って人口を賄う食糧生産は非常に困難な状況が推測されています。農畜産業の技術革新や生産性向上も必要ですが、これまでのような食資源のムダ遣いに歯止めがかからなければ、食資源の枯渇という状態を次世代に渡さなければならないことになります。
 私たち消費者一人ひとりの「食資源のムダ遣い」を減らす努力はもちろん必要ですが、食品産業で連携した活動も重要です。食品残渣を未利用資源として捉え、有効な活用策の開発・活用の仕組み作り・より付加価値の高い利用策の検討・食品産業内での相互理解と信頼関係の構築、そしてエシカル消費の普及啓発など消費者の理解も必要です。
 一企業で出来ることには限りがあります。「食のバリューチェーン」に関わる皆さんと相互に連携した取り組みが益々重要になってきていると感じています。

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