日本生活協同組合連合会

内堀伸健

品質保証本部 安全政策推進室
内堀伸健

■食品表示に対する日本生協連の基本的な考え方と取組み


kikan37_p3_fig.jpg

1.食品表示に関する取り組み
 日本生協連では以前から食品表示の充実化に取り組んでいる。1980年頃から海外の制度を参考にして加工食品(プライベート商品)での栄養成分表示を開始し、1982年には「表示の3原則(商品内容・特性を正しく伝える表示、商品選択に役立つ表示、利用しやすい表示)」を総会で決定して、1984年には食品表示に関する基本スタンスや表示ルールをまとめた「食品表示の手引き」という冊子を作成した。また、食品添加物表示の法制化の動きを受けて「用途名併記を原則とする」といった自主基準を1990年に策定したり、1995年の日付表示の期限表示への一本化の際には、基本的には賛同するものの当面の間は消費者の要望を踏まえて製造年月日の併記をするといった取り組みをしてきた経過がある。
 その後は、社会状況、消費者の意識や知識、食品表示制度などの変化を踏まえて、都度自主基準を見直している。

2.新しい食品表示制度に関する意見表明
 消費者委員会食品表示部会の委員として、またパブリックコメント制度での意見書の中で、日本生協連からは主に下記のような意見表明をしてきた。
①食品表示制度の一元化に関しては、消費者にとって分かりやすい制度にしていく上では歓迎するが、安全性に関わる表示項目を最優先すること、栄養成分表示の義務化には賛成だがそれ以外の項目の義務化は慎重に行うこと。
②栄養成分表示に関しては、先行して義務化している国での状況を踏まえた制度設計をすべきであること、「合理的な推計値」のような可能性表示は認めるべきではなく正確な表示値を確保する努力をすべきであること。
③新しい加工食品の原料原産地表示制度は消費者に分かりにくい制度であり再検討すべきであること、消費者の誤認や混乱を招くため複数の表示方法を認める例外表示は導入すべきではないことなど、全加工食品を対象とした義務化には基本的に反対であること。
④遺伝子組換え表示に関しては、公的検査法や不検出の閾値が明らかにされないままで制度改正を行うべきではないこと、これまでの「遺伝子組換えでない」旨の表示の代替表記(5%~不検出の範囲)に関して統一感のある表示制度を実現すべきであること。
⑤食品添加物表示については、現行制度のレビューを行うべきであること、従来の「食品表示Q&A」の中身を周知徹底することが先決であること、食品表示制度全体の考え方の整理を優先させるべきであること。

3.今後の課題
 遺伝子組換え表示については、生協の組合員が選択できるようにするために、法的には義務表示の対象となっていない醤油や植物油についても、「遺伝子組換えでない」や「遺伝子組換え不分別」の表示を行うようにしてきた。ただ、他の市販品では表示をしていない中にあって生協だけが表示をしていることが、「従来の農作物に比べて遺伝子組換え作物(及びその原材料を使用した加工食品)には安全上のリスクがある」といったメッセージとして受け取られかねないと懸念する意見は生協内部でもあった。法的基準の見直しを契機として、生協内でも今後の遺伝子組換え表示のあり方(情報提供の仕方)について論議を深めていきたいと考えている。
 また、食品添加物不使用表示に関しては、日本生協連でも消費者庁から示されていたQ&Aの考え方にほぼ沿った形でガイドラインを設定しているが、今回の消費者庁の見直し検討会での議論並びに今後消費者庁における専門家会合の動向を踏まえて見直しをかけていくことにしている(※「専門家会合」のことは講演当日には明らかになっていなかったが、ここでは最新の情報を踏まえて追記している)。
 新しい食品表示制度への改定は消費者の要望を踏まえて行われているはずであるが、現時点では消費者の認知度や理解度は必ずしも高くはない。本当に消費者のための食品表示が実現できているのかどうかは、今後も継続して検証していく必要があると考えており、生協に寄せられる組合員からの意見や質問、またアンケート調査の結果などを踏まえ、日本生協連としても評価・検証していきたいと考えている。

タイトルとURLをコピーしました