企業や市民団体の食への取り組み

カゴメ株式会社
コーポレート企画本部 品質保証部長
真殿 達士


■カゴメの創業
 カゴメは愛知県東海市で創業しました。創業者の蟹江一太郎がトマトや西洋野菜の栽培を始め、自宅の納屋でトマトソースの製造を開始しました。その後、トマトケチャップ、トマトジュースを発売し、当時の日本人の食生活の西洋化の流れに合わせて、農家から農産物加工メーカーへの道を進みました。
 自然の恵みを活用して食と健康を追求し、体にやさしいおいしさを体現する。そして、地球環境と体内環境に配慮しながら食の楽しさの新しい需要を創造するという、「自然を、おいしく、楽しく。」をブランドステートメントに掲げ、お客様への約束としています。

■畑は第一の工場
 カゴメには、“畑は第一の工場”というモノづくりの哲学があります。すべては、安全で高品質な原料づくりから始まるということで、よい原料はよい畑から生まれると考えています。フィールドパーソンと呼んでいる専門チームが契約農家さんを巡回して、土づくりから肥料や農薬の適切な使用などアドバイスをしています。原料を購入するのではなく、“原料を農家さんと一緒につくりあげる”という思想です。農家さんと寄り添い、困っていることを解決しながら一緒に喜びを分かち合うという姿勢ですし、お互いをリスペクトしながらここまで事業を継続出来た根幹なのではないかと思います。日本国内だけではなく、海外でも現地スタッフと協力して「栽培プロセス管理」と「モニタリング検査」を行っています。
 各地方で栽培された果実を使った商品も手掛けています。野菜と果実のミックスジュースである野菜生活100の商品群として全国にお届けすることで農業振興にも貢献する取り組みです。“地産全消”という言葉は造語なのですが、「産地と全国を笑顔でつなぐ」というコンセプトで200ml容量の紙パック飲料商品を季節ごと期間限定で年間10種類程度を全国へお届けしています。商品に各地の果実を使うだけでなく、各自治体と連携協定を締結して、店頭での販促やホームページでのブランドサイト開設などで、それぞれの地域の魅力の発信も行っています。

■品質への意識・行動
 カゴメでは、“品質第一、利益第二”というフレーズもよく使われます。判断に迷う場面では、どうしても目先の損益を考えがちですが、「品質を第一に考えなさい。すると結果的に利益もついてきます。」というもので、私たちが立ち返る拠り所になっています。さらに、品質不良の真因を追求して品質事故の発生を少なくすることへ行動を移すようにしています。
 また、“Bad News First/Fast”も社内でよく出てきます。本社、支店、研究開発、工場などすべての部門で共通です。例えば、工場においては、「おかしい」と感じたら、すぐに製造を止めて、上司・前後工程に連絡します。
 2005年につくられた「品質行動指針」には、基本的なことですが非常に重要なことが記載されています。行動指針の4つ目に現場オペレーター一人ひとりにラインを止める権限をはっきりと示しています。これら5つの文章は、すべて「私は…」から始まるもので、我が事として捉えるようになっていることも特徴です。そして最後に、「私は、今日の仕事を振り返り、誇りをもって家族に話すことができます。」と締めくくられています。ミスをしたけど…、おかしいと気づいたけど…、そのまま黙って製造を続けるとそのような気持ちになれません。自分自身に問う重い文章ですが、各自がプライドをもって現場で働いてくれています。

■苦労していること
 気候変動や地政学リスクなどによる原材料の逼迫、エネルギー価格の上昇などにより、原価低減も含めて「原材料の代替」、それに伴う「商品パッケージの改版」「商品規格書の更新」が増加しています。加えて、機能性表示食品やアレルギー物質の表示などの法令改正もあり、変化点管理が悩ましいです。変化点は品質事故に繋がりやすいので神経を使います。照合ソフトを使った文字チェックをはじめ、IT活用も進めていますが、従業員への継続的教育なども進めています。最近では、食品安全文化の醸成が必要と言われています。弊社でも検討を開始しましたが、多くの皆様からご助言をいただきながら、一歩一歩進んでいきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

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