食の安全と安心フォーラム第23回『食品製造における微生物制御の現状と今後の展望』(7/17)活動報告

◎SFSS食の安全と安心フォーラム第23回  活動報告
『食品製造における微生物制御の現状と今後の展望』

【開催日】2022年7月17日(日)<講演会>14:00~17:00 <個別質疑応答>17:00~18:00
【開催場所】オンライン(Zoom)東京大学農学部フードサイエンス棟SFSS事務局より配信
【主 催】NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)
【後 援】消費者庁、東京大学大学院農学生命科学研究科
【賛助・協賛】キユーピー株式会社、旭松食品株式会社、カルビー株式会社、
株式会社セブンーイレブン・ジャパン、日清食品ホールディングス株式会社、
日本生活協同組合連合会、サラヤ株式会社、日本ハム株式会社、東海漬物株式会社
【対 象】一般市民(市民団体)、食品関連行政、食品事業者、メディア関係者、アカデミアなど
【定 員】110名
【参加費】一般3,000円
*SFSS会員、後援団体、協賛社(口数次第)、メディア(媒体名で参加)は参加費無料

令和3年6月に、原則として,すべての食品等事業者に,一般衛生管理に加え,HACCPに沿った衛生管理の実施が義務付けられました。これにより、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で,原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で,それらの危害要因を除去または,低減させるために特に重要な工程を管理し,製品の安全性を確保することになりました。一方で、HACCP導入の基礎となる一般的衛生管理の重要性は変わるものではありません。さらに、SDGsへの取り組みの一環として、食品製造においても、食品ロスの低減などの対応も求められています。これらの背景から、今回は、産官学(国、自治体、大学、企業)の微生物制御に関する有識者を招き、ご講演+パネルディスカッションを実施します。
Zoomブレイクアウトセッションにより、各演者と参加者の皆様との個別の質疑応答の機会ももうけます。

野田衛先生

佐々木貴正先生

斎藤博之先生

小関成樹先生

中本大介先生

【プログラム】
13:00-13:10 開会あいさつ『食品製造における微生物制御の現状と今後の展望』
野田 衛(SFSS理事)
13:10-13:50 『細菌性食中毒対策における衛生管理ポイント(畜産農場~加工施設)』
佐々木 貴正(国立医薬品食品衛生研究所・食品衛生管理部・第一室長)
13:50-14:30 『ウイルス性食中毒~原因物質指定から四半世紀、予防対策の死角とは~』
斎藤 博之(秋田県健康環境センター・保健衛生部・部長)
<coffee break>
14:40-15:20 『食品製造の工程管理における微生物制御への予測微生物学の活用』
小関 成樹(北海道大学大学院農学研究院・食品加工工学研究室・教授)
15:20-16:00 『高圧処理による惣菜の消費期限延長の取組み』
中本 大介(キユーピー株式会社・研究開発本部)
16:00-16:50 パネルディスカッション
パネリスト:上記演者5名、進行:山﨑 毅(SFSS理事長)
16:50-17:00 閉会のあいさつ
阿紀 雅敏(SFSS副理事長)

*講演要旨ならびに講演レジュメは以下のとおりです:

➀開会あいさつ『食品製造における微生物制御の現状と今後の展望 』
野田 衛(SFSS 理事)

野田先生講演レジュメ

②『細菌性食中毒対策における衛生管理ポイント(畜産農場~加工施設)』
佐々木 貴正 (国立医薬品食品衛生研究所・食品衛生管理部・第一室長 )

カンピロバクターやサルモネラなどの食中毒菌は、牛、豚、鶏などの動物の消化管内に棲息していることがありますが、食中毒菌に感染していても食中毒症状を示すこと はほとんどなく、食肉処理施設に出荷されます。農場では、車両消毒、畜舎の洗浄・消毒、作業員の健康チェック、食肉処理施設でも処理ラインの洗浄・消毒、と体洗浄など、様々な食中毒菌汚染防止策を行っていますが、食肉の食中毒汚染を完全に防止することはできず、食中毒発生低減には、消費者を含めたすべての関係者との情報共有と効果的な地点で対策を講じる必要があります。今回は、鶏肉フードチェーンを例に、鶏肉のカンピロバクターとサルモネラの汚染状況と汚染防止策について紹介します。

佐々木先生講演レジュメ

③『ウイルス性食中毒~原 因物質指定から四半世紀、予防対策の死角とは~』
斎藤 博之 (秋田県健康環境センター・保健衛生部・部長)

1997 年にウイルスが食中毒原因物質に指定されてから今年で 26 年目となります。この間、食品関連事業者は行政の指導の下で予防対策に取り組んできました。一方、毎年の食中毒統計を見ると、食中毒患者数の約半分がウイルスを原因としたものであり、四半世紀にわたり 1位の座にあります。 1948 年に食品衛生法が施行されて以来、もっぱら細菌・化学物質・自然毒を対象とした予防対策が取られてきました。原因物質としては新顔に当たるウイルスはこれらとは異なる性質のものであり、延長線上の対策では多くの死角が生じることになります。今回はウ イルス性食中毒の実態に焦点を当てて、予防対策における問題点を掘り下げてみたいと思います。

斎藤先生講演レジュメ

④『食品製造の工程管理における微生物制御への予測微生物学の活用』
小関 成樹 (北海道大学大学院農学研究院・食品加工工学研究室・教授)

食品における有害微生物の増殖や死滅挙動を数理モデルとして記述し,食品における微生物学的な安全性を定量的に評価・確保するための手段として発達してきた研究分野として予測微生物学( Predictive microbiology )がある。 HACCP 制度化に伴い、 HACHACCP に基づく食品製造工程の管理において、対象となる微生物の増殖あるいは死滅を定量的に捉えて、 Critical Limit を科学的な妥当性を根拠に的確に設定する重要性がますます高まっている。本講演では、予測微生物学的なアプローチが食品の製造工程管理において果たす役割について紹介する。

小関先生講演レジュメ

⑤『高圧処理による惣菜の消費期限延長の取組み』
中本 大介 (キユーピー株式会社・研究開発本部)

多くの惣菜は鮮度保持期間が短い点が課題となっている。また、鮮度保持期間を延長するためにこれまで一般的に用 いられてきた加熱処理は、熱変性によるフレッシュ感の低下や、具材の褐変が課題となる。上記課題を解決するため、加熱によらない新たな静菌手法として高圧処理に着目し、冷圧フレッシュ製法®として実用化した。本講演の中で、高圧処理の特長、惣菜への効果について説明する。加えて、高圧処理は静菌手法として着目されがちだが、風味調整の面としても興味深い効果が得られるため、併せて紹介する。当技術は広く食品分野で技術展開が可能であるため、将来的に主流の食品処理方法の一つとなるよう確立を目指す。

中本先生講演レジュメ

*参加者アンケート集計結果

(文責・写真記録:miruhana)

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