企業や市民団体の食への取り組み

遺伝子組換え作物商業栽培30周年
-遺伝子組換え作物の貢献と安全性理解の歩み-

バイテク情報普及会 事務局長
熊谷善敏

 バイテク情報普及会は、植物科学やバイオテクノロジー作物の研究・開発に取り組む企業で構成される国際組織「クロップライフ・インターナショナル」の傘下の団体として、2001年に設立されました。
 私たちは、持続可能な農業と安定した食料供給の実現を目指し、遺伝子組換え作物に関する科学的根拠に基づく制度づくりへの貢献や、バイオテクノロジー作物への理解を深めていただくための情報発信を行っています。

遺伝子組換え作物の食料安全保障への貢献
 1996年、除草剤に強いダイズや、害虫に強いトウモロコシ・ワタなどの遺伝子組換え作物が、本格的に商業栽培されました。これは、世界の農業にとって大きな転換点でした。それから30年が経過し、遺伝子組換え作物は世界各地で広く栽培され、現在では私たちの食生活を支える重要な存在となっています。日本においても、遺伝子組換え作物は日常の食生活と深く関わっています。例えば、輸入されるトウモロコシやダイズの多くは、畜産物を支える飼料として利用されているほか、食用油や液化糖などの加工食品原料として幅広く用いられています。こうした形で、遺伝子組換え作物は私たちの食卓を支えています。
 この30年間、世界の人口は増え続ける一方で、農地や水といった農業資源には限りがあります。さらに、気候変動や病害虫の被害といった課題も深刻化しています。こうした状況の中で、遺伝子組換え作物は、収量を安定させ、農業生産のリスクを軽減する手段として役立ってきました。トウモロコシやダイズなどの主要作物が安定して生産されることは、世界全体の食料供給を支え、食料不足を防ぐ上で重要な役割を果たしています。
 世界の食料供給の安定は、日本にとっても無関係ではありません。2024年のデータによると、日本はトウモロコシやダイズなど多くの作物を海外からの輸入に依存しており、その多くが遺伝子組換え作物です。これら遺伝子組換え作物の輸入量は、推定で約1,850万トンに達し、コメの国内生産量(約734万トン)の2倍以上となっています(表1)。

遺伝子組換え作物の安全
 遺伝子組換え作物について、多くの方が最も関心を持つのが安全性です。これまでの30年間、遺伝子組換え作物は各国で厳格な安全性評価を受けた上で利用されています。日本においても、食品として利用される遺伝子組換え作物はすべて国の安全性審査を受け、承認されたものだけが輸入・流通しています。2025年11月時点で、日本で食品として安全性の確認と利用が認められている遺伝子組換え作物は9種・341品種にのぼります。
 その結果、世界中で長年にわたり食べられてきたにもかかわらず、人の健康や環境に悪影響があったと科学的に確認された事例は一件もありません。こうした評価は、米国科学アカデミー(National Academy of Sciences)をはじめとする各国の科学機関による包括的な報告においても示されており、遺伝子組換え作物は、従来の作物と同程度の安全性があることが認められています。この実績は、遺伝子組換え作物が慎重な評価のもと、安全性を確保しながら活用されてきた技術であることを示しています。 

今後期待される遺伝子組換え作物
 遺伝子組換え技術は、食料の生産量を増やすだけでなく、栄養価など「質」を高める取り組みにも活用されています。その代表例が、ビタミンA不足の解消を目的としたゴールデンライスです。栄養不足が深刻な地域では、主食を通じて必要な栄養素を補える可能性があり、子どもたちの健康改善などへの貢献が期待されています。
 また、干ばつや高温といった気候変動の影響に強い作物の開発も進められており、将来の農業を支える技術として注目されています。

おわりに
 遺伝子組換え作物の商業化から30年という節目は、これまでの歩みを振り返ると同時に、これからの食料と農業のあり方を考える大切な機会でもあります。
 科学的な知見に基づいて正しく理解し、社会の中でどのように活用していくかを考えることが、将来の食料安全保障や持続可能な農業につながります。遺伝子組換え作物は、この30年間で積み重ねてきた経験を土台に、今後も私たちの食と暮らしを支える重要な技術の一つであり続けるでしょう。

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