Q(消費者): 米国で、トランス脂肪酸が健康によくないとして、ある種の加工油脂が使用禁止になったようですが、日本でもトランス脂肪酸は問題なのでしょうか?
A(SFSS):
日本国内の脂質摂取状況は米国とは異なるため、現時点で心配する必要はありません。
米国では、部分水素添加という加工をされた油脂(PHO:マーガリン、ショートニング等)が、クッキーやケーキなどによく配合されており、これら菓子類を過食気味の米国消費者において、その脂質栄養バランス(特にトランス脂肪酸のエネルギー比率が高いこと)がこれまでも問題となってきました。
そこで米国FDAは、脂質栄養バランスを改善する目的でPHOを禁止にすると今回決定をくだしましたが、トランス脂肪酸自体はお肉や乳製品にも普通に含まれる脂質の一種ですので、これを摂取しても安全性に問題はありません。ただし、これを過剰摂取し、栄養バランスが偏ってくると、心臓病などのリスクが上がることが分かっています。
これまでの欧米での疫学研究において、トランス脂肪酸の摂取量がエネルギー比率で2-3%を超えてくると、心臓病の発症率があがり、血中悪玉コレステロールのLDLも上昇することが報告されておりますので、WHO(世界保健機構)もトランス脂肪酸の摂取量をエネルギー比率で1%未満に抑えることを推奨しています。そうすると米国では、その1%を超える方々がまだたくさんおられるようですので、今回のFDAの英断に至ったようです(そんなにお菓子類ばかり食べなければよいのにと思いますが、まあ食文化の違いでしょうか・・)
幸いなことに、日本の消費者のトランス脂肪酸摂取量は、平均で約0.3%、摂取量が多い方の上位5%(95%タイル)を取ったとしても1%に届くかどうかという調査結果が出ておりますので、現時点で米国のようなPHO禁止措置をとる必要性はないでしょう。
もちろんですが、米国でトランス脂肪酸を過剰摂取している消費者と同様、日本においてもクッキーやケーキばかりを毎日たくさん食べていたら、脂質栄養バランス以前に健康を害することは明白ですので、バランスの取れた食生活に留意いただきたいと思います。
トランス脂肪酸のリスク評価について、さらに詳しく知りたい方は食品安全委員会のサイトをご参照ください:
◎食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価の状況について(内閣府食品安全委員会サイトより)
http://www.fsc.go.jp/osirase/trans_fat.html
(文責:山崎 毅)
[2015年6月19日/作成]