【テーマ】『市民の食の安全・安心につながるリスコミとは』
【開催日程】2017年8月27日(日)13:00~17:50
【開催場所】東京大学農学部フードサイエンス棟 中島董一郎記念ホール
【主 催】NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)
【後 援】消費者庁、東京大学大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター、
一般社団法人食品品質プロフェッショナルズ
【参加費】3,000円/回
*SFSS会員、後援団体(団体あたり先着5名まで)、メディア関係者は参加費無料
3人の専門家より、それぞれのテーマに沿ったご講演をいただいた後、パネルディスカッションでは会場の参加者からのご質問に対して活発な意見交換がなされました。
【プログラム】
13:00~14:00 『メディアのリスク報道を考える』
小島 正美(毎日新聞社)
14:00~15:00 『放射線被ばくや食品汚染をめぐる対話の経験』
多田 順一郎(放射線安全フォーラム)
15:00~15:20 休憩
15:20~16:20 『リスク・コミュニケーションのパラダイムシフトが必要だ!』
関澤 純(NPO食品保健科学情報交流協議会 理事長)
16:20~17:50 パネルディスカッション
『市民の食の安全・安心につながるリスコミとは』
進行:山崎 毅(SFSS)、パネラー:各講師
18:00~19:30 懇親会
小島正美先生
多田順一郎先生
関澤純先生
*講演要旨ならびに講演レジュメは以下のとおりです:
① 小島 正美(毎日新聞社)
『メディアのリスク報道を考える』
なぜ、いつまでたっても福島産への風評がなくならないのか。その大きな要因のひとつはメディアにある。一般の人々のリスク観は、口コミも含め、すべてメディアの報道に左右される。そのメディアの世界は現在「島宇宙化」していて、正確にリスクを伝えるメディアや記者が偏在している。賛否両論あるにせよ、多数の科学者が抱くリスク観を一般の人に伝えることが重要だと思うが、それができにくいのはなぜなのか。これらの問題は遺伝子組み換え作物や子宮頸がんワクチン、豊洲移転問題にもあてはまる。メディアのリスク報道のあり方を一緒に考えたい。
② 多田 順一郎(放射線安全フォーラム)
『放射線被ばくや食品汚染をめぐる対話の経験』
福島で放射線に関するアドバイスをお手伝いして6年が経ちました。その間、人々の放射線被ばくや、食品の放射性セシウム汚染に対する不安は、表面上徐々に静まってきたように思えます。しかし、福島産の食品を避ける方や、将来の健康や出産に不安を持つ方が消えた訳ではありません。いわゆるリスコミなど苦手な講演者は、被災地の方々と対話しても、むしろ教えられることの方が多かった気が致します。講演では、そうした「気付き」の中から、放射線影響に関する「専門家」の説明のどこに誤りがあったかや、人々がとらわれている遺伝的影響への不安についてお話しします。
<参考情報>
◎低線量放射線の健康影響に関する迷信
不十分だった専門家の説明、刷り込み続けられる遺伝的影響への恐怖
多田順一郎 NPO法人「放射線安全フォーラム」理事
http://webronza.asahi.com/science/articles/2017072700001.html
③ 関澤 純(NPO食品保健科学情報交流協議会 理事長)
『リスク・コミュニケーションのパラダイムシフトが必要だ!』
豊洲市場移転を巡り土壌汚染が問題視され、都・専門家会議と市場関係者間の見解相違、都の対応の不適切さにより紛糾している。福島原発事故後6年以上経過し避難長期化で解決困難な状況を生じ、除染・帰還と健康影響の可能性などを巡り、避難住民と行政・専門家間で複雑な対立関係がある。両者は科学的事実の解釈におけるリスク・コミュニケーションの課題と見られがちだが、社会的リスクには科学的側面の他に、生活、営業、関係者の人生設計まで関わる。リスク・コミュニケーションを発信者側の科学情報提供の一環として見るのでなく、リスクを受ける関係者が主人公であり適切な情報提供を大前提に、彼らの問題に正面から向き合い、自主的な意思決定を尊重しつつ問題解決を図るというパラダイムシフトが求められる。
*なお、参加者アンケートの集計結果は後日掲載します。
(文責・写真撮影:miruhana)