食のリスクコミュニケーション・フォーラム2018
『消費者市民のリスクリテラシー向上につながるリスコミとは』
第3回テーマ:『原料原産地のリスコミのあり方』(8/26)開催速報
【開催日程】2018年8月26日(日)13:00~17:50
【開催場所】東京大学農学部フードサイエンス棟 中島董一郎記念ホール
【主 催】NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)
【後 援】消費者庁、東京大学大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター、
一般社団法人食品品質プロフェッショナルズ
【参加費】3,000円/回
*SFSS会員、後援団体(団体あたり先着5名まで)、メディア関係者は参加費無料
3人の専門家より、それぞれのテーマに沿ったご講演をいただいた後、パネルディスカッションでは会場の参加者からのご質問に対して活発な意見交換がなされました。
【プログラム】
13:00~14:00 『食品表示はどうあるべきか』
井之上 仁(日本生活協同組合連合会)
14:00~15:00 『複雑な原料原産地表示は、消費者・生産者の利益になるか』
中村 啓一(公益財団法人食の安全・安心財団)
15:00~15:20 休憩
15:20~16:20 『「安全情報」と「安心情報」の切り分けが重要だ』
山崎 毅(NPO 法人食の安全と安心を科学する会(SFSS))
16:20~17:50 パネルディスカッション
『市民の食の安心につながるリスコミとは』
進行:山崎 毅(SFSS)、パネラー:各講師
18:00~19:30 懇親会
井之上仁先生
中村啓一先生
山崎毅理事長
*講演要旨ならびに講演レジュメは以下のとおりです:
① 井之上 仁(日本生活協同組合連合会)
『食品表示はどうあるべきか』
日本生活協同組合連合会は、各地の生協や生協連合会が加入する全国連合会であり、その組合員総数は約2800万人にもなり「日本最大の消費者組織」といえます。また、食を中心に、ふだんのくらしへの役立ちをより一層高めることを目的として、現在、約4000アイテムもの CO・OP 商品を展開しています。食品表示については組合員が商品を「選ぶときに役立つ」表示であることなどの「原則」を1982年にさだめ、独自の取り組みを行ってきました。「消費者組織」および「商品事業」の両方の側面から、最近の食品表示をとりまく状況含め、食品表示はどうあるべきかについて考えたいと思います。
② 中村 啓一(公益財団法人食の安全・安心財団)
『複雑な原料原産地表示は、消費者・生産者の利益になるか』
「消費者が必要とする情報をわかりやすく正確に伝える」ことは、事業者の責務であり、食品表示は有効な情報伝達手段となる。表示された内容は適切で正確であることが絶対条件となるが、全ての加工食品に表示を義務付けることを前提とした「食品表示基準」の改正は、「わかりやすく正確」という食品表示の原点に立ち戻った場合、多くの問題を提起しているといわざるを得ない。消費者庁は、全ての加工食品に原料原産地に関わる何らかの表示をさせるための方策として、輸入等の大括り表示や中間加工品の製造地表示など様々な例外規定を設けたが、これは食品表示の基本である情報の正確性を犠牲にすることとなり、消費者だけでなく事業者をも混乱させる懸念がある。
③ 山崎 毅(NPO 法人食の安全と安心を科学する会(SFSS))
『「安全情報」と「安心情報」の切り分けが重要だ』
「食の安全」情報とは、これを見間違えることによりすべての消費者または一部の脆弱な消費者に対して健康被害が起こりうるリスク情報という意味であり、その逆に「食の安心」情報とは見間違えてもそれに直接起因する健康被害が起こりえないもので、消費者の主観的・合理的選択に資するための表示情報という意味である。この度すべての加工食品(輸入品除く)を対象として原料原産地表示が義務化されたわけだが、これらが明らかに「食の安心」情報であることから、消費者市民への不信 感をまねかないようなスマート・リスコミを食品事業者に期待したい。
*なお、参加者アンケートの集計結果は後日掲載します。
(文責・写真撮影:miruhana)