
エスビー食品の食物アレルギー配慮の取組み
エスビー食品株式会社 広報・IR室 スペシャリスト
高山大介
食物アレルギーとは、食物を摂取した際に身体が食物に含まれるたんぱく質等(アレルゲン)を異物として認識し、自分の体を過剰に防御することで不利益な症状を起こすことをいいます。食物アレルギーは製造や表示の管理を間違えると消費者の生命にかかわるため、私たち食品メーカーにとって最も重要なリスク因子だといえます。
現在日本では国内における食物アレルギーの発症数や重篤度を勘案して加工食品での表示を義務付け、あるいは推奨するアレルゲン(特定原材料等)を指定しています。特定原材料等は概ね3年ごとにアレルギー専門医の協力のもとで実施している全国調査に基づいて定期的な見直しが行われており現在は28品目が指定されています。なお、近年では「木の実類」に由来する食物アレルギー症例数の顕著な増加が指摘されています。2025年度中にも「カシューナッツ」の表示義務化(推奨品目からの移行)と「ピスタチオナッツ」の表示推奨品目への追加が行われて、特定原材料等は全部で29品目となる予定です。

「カレーの王子さま」シリーズは、1983年にエスビー食品が日本で初めての子ども向けカレーブランドとして発売した商品です。その当初から「カレーの王子さま」は離乳食を終えたお子さまが初めて召し上がるカレーとして、子どもたちの健康や家族の愛情を大切なブランドコンセプトとしていました。その後1997年の商品リフレッシュにあたって、社会課題となりつつあった食物アレルギーに配慮した商品を開発することとなりました。しかし当時は食物アレルギー表示制度もない時代であり(食物アレルギー表示制度は2001年から)、商品開発担当者が医師に話を伺いに行っても最初は「大量生産する加工食品でアレルギー配慮などできっこない」と突き返されたという話が伝わっています。それでも「食物アレルギーをお持ちの方でも安心して食べられるカレーを作りたい!」という担当者の強い想いのもと、医師や食物アレルギー当事者との意見交換を重ねて開発された「カレーの王子さま」は、現在では顆粒タイプが特定原材料等28品目不使用の仕様となり、世代を超えて多くの皆さまに愛される商品となっています。
エスビー食品では、食物アレルギー患者団体であるアトピッ子地球の子ネットワークが毎年夏に実施している環境教育キャンプに、ボランティアスタッフとして開発部門の若手メンバーを中心に参加をしてきました。このキャンプは神奈川県相模原市のキャンプ場を会場として、食物アレルギーの当事者たちが自然と触れ合うとともに相互に交流し、また食物アレルギーについて学ぶ場となっています。キャンプ中に提供される食事は事前のアレルギー症状の聞き取りに基づいて調理されたもので、食物アレルギーを持っている子どもたちが何の心配もなく食べられるようになっています。あいにくコロナ禍の影響によって、数年間はオンラインでの開催となっていたのですが、今年、2025年8月に6年ぶりに実地開催され、筆者も開発部門の若手メンバーとともにボランティアスタッフとして参加しました。今回のキャンプは以前とは異なり中高生の参加者が中心で、日々の生活の中での食物アレルギー当事者としての苦悩や楽しさを分かち合うワークショップなども実施されました。さいわい2泊3日の会期中は天候にも恵まれ、参加者とボランティアスタッフともども、自然の中で充実した時間を過ごすことができました。当社から参加したメンバーにとっても、食物アレルギー当事者の子どもたちとの交流や、自分たちが作った食物アレルギー配慮商品を使用して作ったカレーを、笑顔で召し上がっていただく光景を目にすることを通じて食品メーカーの社員として得るものがあったのではないかと考えます。
当社にとって食物アレルギー配慮の取組みは重要なリスク管理項目であるとともに、企業と消費者を結びつける大切な結節点にもなっていると考えています。


