2025年4月から10月にかけて食のリスクコミュニケーションを テーマとしたフォーラムを4回シリーズで開催いたしました。
毎回100名~120名程のご参加があり、3人の専門家より、 それぞれのテーマに沿ったご講演をいただいた後、 パネルディスカッションではオンライン参加者からの ご質問に対して活発な意見交換がなされました。
◎食のリスクコミュニケーション・フォーラム2025
【テーマ】『市民のリスクリテラシ-向上につながるリスコミとは』
【開催日程】
第1回 2025年4月26日(土)13:00~17:00
第2回 2025年6月21日(土)13:00~17:00
第3回 2025年8月30日(土)13:00~17:00
第4回 2025年10月19日(日)13:00~17:00
【開催場所】東京大学農学部フードサイエンス棟中島董一郎記念ホール+オンライン会議(Zoom)ハイブリッド開催
【主 催】NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)
【後 援】消費者庁、東京大学大学院農学生命科学研究科
【賛助・協賛】キユーピー株式会社、旭松食品株式会社、カルビー株式会社、
株式会社セブンーイレブン・ジャパン、日本生活協同組合連合会、サラヤ株式会社、
日本ハム株式会社、東海漬物株式会社
【参加費】3,000円/回
*SFSS会員、後援団体、協賛団体(口数次第)、
メディア(媒体名で参加)、栄養士、学生は参加費無料
<第1回> 2025年4月26日(土)『機能性表示食品の安全性をどう担保する?』
【プログラム】
13:00~13:50 『機能性表示食品等の今後の問題点』
宗林 さおり(岐阜医療科学大学 教授)
13:50~14:40 『消費者からの有害事象に関する自発報告の意義』
種村 菜奈枝(福島大学食農学類 准教授)
14:40~15:30 『紅麹問題を受けた機能性表示食品制度の変更点と事業者・消費者の安全への向き合い方』
加藤 亮(読売新聞東京本社 記者)
15:30~15:50 休憩
15:50~17:00 パネルディスカッション
『機能性表示食品の安全性をどう担保する?』
パネリスト:上記講師3名、 進行:山崎 毅(SFSS理事長)

宗林さおり先生

種村菜奈枝先生

加藤亮先生


*講演要旨ならびに講演レジュメは以下のとおりです:
➀宗林 さおり(岐阜医療科学大学 教授)
『機能性表示食品等の今後の問題点』
機能性表示食品は昨年の紅麹の問題が起きたことで大きく注目されることとなり、再発防止のため検討会が開催され、改善点・基準等が出ている。1 つは健康被害情報の収集であるが、医師のヒアリング等が必須となり、報告対象となる事例が集まりにくくなっている。この具体的問題点と、企業や消費者はどう対処すればいいのかお話ししたい。また、GMP の義務化については、準備に時間を要することや、栄養機能食品やその他のいわゆる健康食品についても課題があると考えている 等。
<宗林先生講演レジュメ>
➁種村 菜奈枝(福島大学食農学類 准教授)
『消費者からの有害事象に関する自発報告の意義』
いわゆる「健康食品」は、主に健康の維持増進や不足した栄養素の補給等を目的とした摂取が期待されている。一方、利用にあたっては、一定のリスクの存在も無視できない。
いわゆる「健康食品」の摂取に伴う健康被害を未然防止または拡大防止するためには、その予兆(いわゆる、“シグナル“として)を迅速に察知することが重要である。この統計的なシグナル検出の目的は、いわゆる「健康食品」の安全性にかかわる仮説を効率的に生み出し、安全性評価の優先順位付けの助けとなる可能性がある。そこで、健康被害の拡大防止を目的に、重要な有害事象の予兆をシグナルとして効率的に検出するための解析方法の事例を紹介するとともに、シグナル検出を可能とするために必要な安全性情報集積の
意義を述べたい。
<種村先生講演レジュメ>
➂加藤 亮(読売新聞東京本社 記者)
『紅麹問題を受けた機能性表示食品制度の変更点と事業者・消費者の安全への向き合い方』
昨年3月に小林製薬が機能性表示食品のサプリメント「紅麹コレステヘルプ」を摂取した人が腎臓の病気になったと発表してから1年が経過した。同社に申し出のあった死者数は400人を超えた。
機能性表示食品でこれだけ大きな被害が発生したことを国は大きく受け止め、短期間で制度の見直しに着手した。制度の変更点は多岐にわたり、事業者には新たにどんなことが求められるのかを確認するとともに、安全に利用するために消費者は、どのように機能性表示食品と向き合っていく必要があるかを考える。
<加藤先生講演レジュメ>
<第2回> 2025年6月21日(土)『培養肉のリスクとベネフィット』
【プログラム】
13:00~13:50 『細胞培養による食品の現状とその安全性の考え方』
五十君 靜信(学校法人東京農業大学 食品安全研究センター長/総合研究所教授)
13:50~14:40 『培養肉は人々にどう受け止められるのか:意識の国際調査の紹介』
日比野 愛子(弘前大学人文社会科学部/教授)
14:40~15:30 『“Cultivated”という選択:新規食品の用語をめぐる国際的合意と消費者理解』
洪 貴美子(GFI Japan マネージングディレクター)
15:30~15:50 休憩
15:50~17:00 パネルディスカッション
『培養肉のリスクとベネフィット』
パネリスト:上記講師3名、 進行:山崎 毅(SFSS理事長)

五十君靜信先生

日比野愛子先生

洪貴美子先生


*講演要旨ならびに講演レジュメは以下のとおりです:
➀五十君 靜信(学校法人東京農業大学 食品安全研究センター長/総合研究所教授)
『細胞培養による食品の現状とその安全性の考え方』
細胞培養による食品の安全性は、製造時の工程管理に加え、使用する細胞株の安全性、培地成分の確認、最終製品に残留する物質の健康影響評価などの検討が求められます。動物など由来生物の食経験の有無や遺伝子操作の有無も安全性評価には求められます。これまでにない製造法であるため、新たなリスクが生じていないかなどを科学的な視点で評価する必要があります。食品ですから消費者の信頼確保も重要です。国際的な規制やガイドラインの整備も必要と考えます。今回は、当該食品の開発の現状に加え、リスク評価の基礎研究として行った鶏由来の細胞を用いた網羅的解析により得られた研究結果などを紹介し、細胞培養による食品の安全性の考え方を整理してみたいと思います。
<五十君先生講演レジュメ>
➁日比野 愛子(弘前大学人文社会科学部/教授)
『培養肉は人々にどう受け止められるのか:意識の国際調査の紹介』
近年注目を集めている培養肉については、先導的に推進するシンガポール、抑制するイタリアなど、さまざまな政策が見られる。人々がこの新しい食品技術をどのように受容するかの意識調査も数多く行われてきた。リスクやベネフィットの認知に加え、環境意識も培養肉への態度を左右するが、日本では環境というフレームが必ずしも訴求力を持つわけではないことも指摘されている。日本、シンガポール、オーストラリア、イタリア、デンマークで実施した培養肉に関する意識の国際調査を紹介し、地域に即した適切なコミュニケーションのあり方を検討したい。
<日比野先生講演レジュメ>
➂洪 貴美子(GFI Japan マネージングディレクター)
『“Cultivated”という選択:新規食品の用語をめぐる国際的合意と消費者理解』
細胞農業技術により生産される『Cultivated Meat』は、環境負荷の軽減や動物福祉、公衆衛生、食料安全保障への貢献が期待されている一方、新規性ゆえに消費者の不安や誤解も生じやすい。本講演では、GFIが2019年以降に北米・欧州・シンガポール等で実施した調査や業界連携の知見をもとに、「cultivated」という用語が選定・合意されてきた背景を紹介し、リスク認知や受容に与える影響を考察する。また、非英語圏における今後のリスクコミュニケーションの課題と可能性にも触れたい。
<洪先生講演レジュメ>
<第3回> 2025年8月30日(土)『ウイルス性食中毒のリスク低減策』
【プログラム】
13:00~13:50 『食品衛生におけるノロウイルス対策の急所』
斎藤 博之(秋田県健康環境センター 保健衛生部 シニアエキスパート)
13:50~14:40 『サポウイルス等の「その他のウイルス」による食中毒とその対策』
岡 智一郎(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部第四室長)
14:40~15:30 『ウイルス性食中毒のリスコミのポイント』
野田 衛((公社)日本食品衛生協会 学術顧問/SFSS理事)
15:30~15:50 休憩
15:50~17:00 パネルディスカッション
『ウイルス性食中毒のリスク低減策』
パネリスト:上記講師3名、 進行:山崎 毅(SFSS理事長)

斎藤博之先生

岡智一郎先生

野田衛先生


*講演要旨ならびに講演レジュメは以下のとおりです:
➀斎藤 博之 (秋田県健康環境センター 保健衛生部 シニアエキスパート)
『食品衛生におけるノロウイルス対策の急所』
新型コロナウイルスが令和5年5月8日に5類感染症となり、日常生活における行動制限はなくなった。それ以降、ノロウイルスによる食中毒が急増傾向にあり、食中毒統計によると、令和5年は事例数の16%、患者数の47%であったものが、令和6年では事例数の27%、患者数の61%となっている。令和7年の状況は、7月1日時点の速報値で、484事例中269事例(56%)、患者8,901人中7,672人(86%)とさらに悪化している。予防対策について、これまでにも様々なルートを通じて啓発がなされてきているものの、こうした健康被害が後を絶たないのは、どこかに抜け落ちた部分があるからで、本講演ではリスク低減のために抑えておきたいポイントについて解説する。
<斎藤先生講演レジュメ>
➁岡 智一郎 (国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部第四室長)
『サポウイルス等の「その他のウイルス」による食中毒とその対策』
報道、行政集計では、食中毒を引き起こすウイルスといえばノロウイルスが圧倒的に多いが、「その他の食中毒ウイルス」としてサポウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスといったものがある。本講演では、これらのウイルスの特徴、国内における食中毒事例、その推定原因を紹介するとともに、どのような対策がこれらのウイルス性食中毒のリスク低減策として有効と考えられているのか、調理過程における注意点や、その課題とともにお伝えしたい。
<岡先生講演レジュメ>
➂野田 衛 (SFSS副理事長、国立医薬品食品衛生研究所 客員研究員)
『ウイルス性食中毒のリスコミのポイント』
ウイルス性食中毒の大半を占めるノロウイルス食中毒の多くは食品取扱者から食品への二次汚染が原因となっています。ノロウイルス対策のポイントは大量調理施設衛生管理マニュアル(厚生労働省)に含まれていますが、同マニュアルの最終改定(2017年6月16日)から8年が経過し、その課題も見えてきました。ノロウイルス食中毒の現状を踏まえ、より現状に即した対策について考えたいと思います。また、2025年2月ノロウイルス食中毒やノロウイルス等が原因となる感染性胃腸炎が多発しました。その要因について気象条件との関連性に興味深い結果が得られたので、併せて紹介する予定です。
<野田先生講演レジュメ>
<第4回> 2025年10月19日(日)『腸内細菌による健康リスク低減』
【プログラム】
13:00~13:50 『腸内細菌叢と健康のかかわり』
平山 和宏(東京大学大学院農学生命科学研究科 附属食の安全研究センター長・教授)
13:50~14:40 『食由来腸内細菌代謝物と肥満・免疫制御』
宮本 潤基(東京農工大学大学院農学研究院食品機能学研究室・准教授)
14:40~15:30 『腸内細菌叢研究から考える健康で幸せな生活への貢献』
小田巻 俊孝(森永乳業株式会社研究本部基礎研究所腸内フローラ研究室・室長)
15:30~15:50 休憩
15:50~17:00 パネルディスカッション
『腸内細菌による健康リスク低減』
パネリスト:上記講師3名、 進行:山崎 毅(SFSS理事長)

平山和宏先生

宮本潤基先生

小田巻俊孝先生


*講演要旨ならびに講演レジュメは以下のとおりです:
➀平山 和宏(東京大学大学院農学生命科学研究科 附属食の安全研究センター長・教授)
『腸内細菌叢と健康のかかわり』
我々の腸内には膨大な数の細菌が住んでおり、互いに複雑に関係しあいながら安定した生態系、すなわち腸内細菌叢を構成している。腸内細菌叢は宿主の代謝を上回る多彩な代謝活性を有し、我々宿主とも密接な相互関係を持ちながら健康や疾病に様々な影響を与えている。その影響は、我々に有益な場合もあれば、有害な場合もある。近年では、免疫系の正常な発達や肥満や糖尿病など、腸管以外の全身への影響についての報告もみられる。行動や脳の機能への影響にも注目が集まっている。今回のフォーラムでは、腸内細菌叢の健康へのかかわりや腸内環境を良い状態に保つことによって健康を維持する試みについて、講師の先生方に紹介していただく。
<平山先生講演レジュメ>
➁宮本 潤基(東京農工大学大学院農学研究院食品機能学研究室・准教授)
『食由来腸内細菌代謝物と肥満・免疫制御』
近年のメタゲノム解析やメタボローム解析などのオミクス技術の進展により、腸内細菌の構成や機能、そして腸内細菌が産生する多様な代謝物が宿主の免疫系、代謝系や神経系に多面的な影響を及ぼすことが明らかとなってきた。特に、宿主が摂取した食事を基質として腸内細菌が産生する代謝物(食由来腸内細菌代謝物、ポストバイオティクス)は、腸内環境と宿主の生理応答を繋ぐシグナル分子として注目されている。本講演では、我々が明らかにした食由来腸内細菌代謝物の同定およびその宿主受容体を介した恒常性維持機構について、最新の知見を交えて紹介する。
<宮本先生講演レジュメ>*公開期間は終了しました
➂小田巻 俊孝(森永乳業株式会社 研究本部 バイオティクス研究所 所長)
『腸内細菌叢研究から考える健康で幸せな生活への貢献』
食品企業は、日々の食生活を通じて人々の健康で幸せな生活に寄与できると考えている。我々も「かがやく”笑顔”のために」をコーポレートスローガンとして掲げ、腸内細菌叢の研究を推進することで人々への貢献を模索している。本講演では、善玉菌として混同されがちなビフィズス菌と乳酸菌の違いや、ヒトと共に進化してきた一部のビフィズス菌が、なぜ我々の健康維持に寄与するのかについて、基礎・応用・臨床研究を通じて得られた知見を紹介しながら考えてみたい。
<小田巻先生講演レジュメ>
(文責・写真:miruhana)


