食の安全と安心フォーラム シリーズ第9回 ~我が国における食物アレルギーの現状とリスク管理②~ (2015年2月3日)

NPO法人食の安全と安心を科学する会 理事
小川 正


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2014年11月28日、グランフロント大阪オカムラショールーム(JR大阪駅前)において標記主題のフォーラムが開催されました(主催:NPO法人食の安全と安心を科学する会、後援:東京大学大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター、協賛:日本ハム株式会社)。
少子高齢化が進む中、「食物アレルギー」が原因でアナフィラキシーショックを起こし、死に至るケースもありうるため、食物アレルギーの子供をかかえるご家族にとっては不安も多いことと思われます。今回のフォーラムは、去る平成26年2月に東京において開催された初回のフォーラム「食物アレルギーの基礎・理論の理解と現状」から一歩踏み込んで、実際日々のリスクに直面する患者家族を交えて、患者の立場に立った「リスクの発生と管理」に関して、臨床現場で治療に当たる医師および栄養指導に当たる栄養士、基礎理論の研究者による新規アレルギー情報の提供、給食・外食産業等の食事の提供者から提言を交え、会場の皆さまからも疑問、質問を提起して頂き、活発に討論する機会をもうけました。

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まず、本フォーラムでは食物アレルギーにおけるリスクがどのような場面で発生するのかに関し、「ひやりはっと事例からみた食物アレルギーの現状とリスク対策」と題して現場の医師・近藤 康人 教授(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院・小児科)から詳細なリスク発生の現状、事例の報告を頂き、その対処を通して、救急医療としてのエピペンの使用を含めた解説を頂いた。ついで、「花粉症に関連する新しいタイプの食物アレルギー -発症リスクの変動解析―」と題して研究者・森山 達哉 教授(近畿大学農学部・応用生命化学科)に近年問題になりつつある花粉症との交差アレルギーを、食物アレルギーの感作原因物質(アレルゲン)の分類を通してその多様性や交差性(新しいタイプのアレルゲンによる)とそのリスク対策の必要性を食事との関係について解説して頂いた。ここで、実際に家庭であるいは給食の現場で食物アレルギーの患者の食事対策に取り組んでいる二人の栄養士から、食生活を通して患者のQOLを向上するための方策を紹介頂いた。一つは、「保育園における和食給食指導の現場での実態」と題して渡辺 雅美 栄養士(SFSS理事)より、給食におけるリスク回避のための食事管理および日本人にとって有効な食事法の例として「和食」を基本とする食生活の有効性について報告頂いた。さらに、「子どものアレルギー食と栄養 -三大アレルゲン除去の美味しい料理と子どもの成長に必要な栄養―」と題して、諏訪 淳子 栄養士(健康栄養支援センター代表理事)から、あいまいな判断による除去食が乳幼児の成長障害を引き起こす原因になること、正しい栄養学の知識に則った科学的指導に基づく栄養指導の必要性について話題提供を頂いた。コーヒーブレークの休憩をはさんで、「食物アレルギー患者の立場からのリスク管理への提言 -外食産業におけるアレルゲン情報の提供促進への取組―」と題して患者(患者の保護者)の立場から、消費者庁が取り組んでいる、外食産業(レストラン、ホテルなどの不特定多数に対する集団給食施設)でのアレルギー食品(食材)の表示の仕方(方法)に関して田野 成美 代表(大阪狭山食物アレルギー・アトピーサークル「Smile Smile」)による報告および提言をリスク管理という観点から話して頂いた。この内容は、消費者庁が「表示」の必要性を認識し、現在取り組んでいる(何度かの検討会を経て現在法令の制定に向けての最終段階に入っている)システム構築の過程で出た多くの意見・提言をまとめて頂いた。

最後に、小川からは、食物アレルギー患者が直面するリスク発生の諸原因を如何に回避するかについての自己管理法についての提言、また、行政の取り組んでいる食品衛生、栄養・食糧行政の面からの対策(アレルギー食品の高感度、高選択的検出・定量法の構築)、および低アレルギー食品の開発や自己防衛的には抗アレルギー食生活によるリスク低減化策について言及した。
最後に、総合パネル討論会を行って、追加討論、フォーラム全体のまとめ、質疑・応答が行われた。コメント、感想・意見を総合すると、過去の経験からどうしても起こりうることが予想される重篤なアナフィラキシー患者に対して、現場におけるエピペンの使用の判断とタイミングの重要性について納得のいく医師からの説明がなされた。ここで示された思考から判断、行為に至る行動は過去の悲劇を繰り返さないためにも食事の現場にいる誰もが共有しなければならない一般常識となることが望まれる。今回のフォーラムでは現場で実際に生じた食物アレルギーのリスクの豊富な事例が提示され、参加者全員が改めてそのリスク発生頻度の高さ(食品や食事への対処の甘さ)を再認識させられた。食物アレルギーに関しては、家庭や業務に関わらず、食事の提供者として、リスク発生要因に関して最低限の基礎知識を共有しているかがいかに大切かを思い知らされた。

なお、フォーラムの概要報告はSFSSホームページにてご参照ください。

(文責:SFSS理事 小川 正)

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