食のリスクコミュニケーション・フォーラム2019
『消費者市民の安全・安心につながる食のリスコミとは』
第1回テーマ:『食の放射能汚染のリスコミのあり方 ~風評被害にどう立ち向かう?』(4/21)開催速報
【開催日程】2019年4月21日(日)13:00~17:50
【開催場所】東京大学農学部フードサイエンス棟 中島董一郎記念ホール
【主 催】NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)
【後 援】消費者庁、東京大学大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター
【協 賛】一般社団法人食品品質プロフェッショナルズ
【参加費】3,000円/回
*SFSS会員、後援団体(先着1~2名程度)、メディア関係者(取材の場合)は参加費無料
3人の専門家より、それぞれのテーマに沿ったご講演をいただいた後、パネルディスカッションでは会場の参加者からのご質問に対して活発な意見交換がなされました。
【プログラム】
13:00~14:00 『住民とのリスクコミュニケーション:専門知見の伝え方』
小林 智之(日本学術振興会・福島県立医科大学医学部健康リスクコミュニケーション学講座)
14:00~15:00 『原子力事故後の風評被害のメカニズムと8 年目の対策』
関谷 直也(東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター / 福島大学食農学類 )
15:00~15:20 休憩
15:20~16:20 『食品中の放射能汚染の現状は?検査結果を確認しよう。』
田野井 慶太朗(東京大学 大学院農学生命科学研究科)
16:20~17:50 パネルディスカッション
『食の放射能汚染のリスコミのあり方、風評被害にどう立ち向かうか』
パネリスト:各講師、石川 一(消費者庁 消費者安全課)
進行:山崎 毅(SFSS)
18:00~19:30 懇親会
*講演要旨ならびに講演レジュメは以下のとおりです:
①小林 智之(日本学術振興会・福島県立医科大学医学部健康リスクコミュニケーション学講座)
『住民とのリスクコミュニケーション:専門知見の伝え方』
人間のリスク認知は、ときおり極めてデタラメである。たとえば、とある食品添加物が危ないかどうかは、実際の毒性の強さよりも、その物質名の発音のしにくさによって見積もられる。そんなデタラメなリスク認知は、デタラメなくせに、強力に人々の行動を規定する。そのため、多くの専門家にとって素人のリスク認知は捉えがたく悩ましい。専門家と素人のリスクコミュニケーションでは、安全性の証明と安心感の提供は独立した努力であるべきだろう。本講演では、リスク認知について社会心理学の知見を紹介しつつ、発表者自身の住民とのコミュニケーションの経験を交えながら、食の放射能汚染のリスクコミュニケーションのあり方について考察する。
② 関谷 直也(東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター/福島大学食農学類)
『原子力事故後の風評被害のメカニズムと8年目の対策』
風評被害とは、ある社会問題(事件・事故・環境汚染・災害・不況)が報道されることによって、本来「安全」とされるもの(食品・商品・土地・企業)を人々が危険視し、消費、観光、取引をやめることなどによって引き起こされる経済的被害を指す。東日本大震災から8 年が経過する中で、放射線量は低下し、林産品や野生の動物を除いては農産物から放射性物質が基準値以上の放射性物質が検出されることも極めて稀になってきた。米も、毎年、約1000 万袋の全量全袋調査が行われ、2015 年以降は100Bq/kg 以上が検出されるものはなくなった。直後は放射性物質汚染の被害(実害)か風評被害かなどがないまぜになったものであったが、現在は安全と確認された商品の経済被害の問題となってきた。ここで改めて「風評被害」という言葉を整理してみたい。
③ 田野井 慶太朗(東京大学 大学院農学生命科学研究科)
『食品中の放射能汚染の現状は?検査結果を確認しよう。』
最近は都内でも福島県産の農産物を見ることは稀ではなくなってきました。「流通しているのだからそれら農産物は大丈夫なのでしょ。」と考える方が多いと思います。ここで今一度、検査結果を確認することで、あらためて流通食品の安全性を再確認したいと思います。農産物の風評被害について冷静に議論するには、実際のデータを基にしたevidence(証拠と訳せるでしょうか)が必要です。風評被害には、しっかりとしたevidence とともに立ち向っていただきたいと思います。
④ 石川 一(消費者庁 消費者安全課)
*なお、参加者アンケートの集計結果は後日掲載します。
(文責・写真撮影:miruhana)