
国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部第四室長
岡 智一郎
サポウイルスによる食中毒とは
ノロウイルスによる食中毒は報道や行政の集計でよく見られるが、症状や発生時期が似たサポウイルスによる食中毒も存在する。
サポウイルスの症状と特徴
サポウイルスの症状は嘔吐、吐き気、下痢、腹痛、発熱、頭痛などで、ノロウイルスと同様である。感染から発症までの期間と症状の持続はいずれも1~3日で、年齢を問わず感染・発症する。感染者は便中に多量のウイルスを排出し、不顕性感染者もいる。飲食店、仕出屋、旅館などでの発生が多い点もノロウイルスと共通している。
主な感染経路と過去の事例
原因はノロウイルスと同様で、アサリやカキなどの二枚貝、汚染水、ウイルス陽性の調理従事者を介した汚染食品の摂取が挙げられる。国内最大の事例は2012年、愛知県などで約650人が発症した弁当によるものである。

発生状況と季節的傾向
厚生労働省の集計によると、2009年から2025年10月末までにサポウイルス食中毒は69件、患者数3378人が報告されている(図1)。
発生は主に11~6月に集中している。
ノロウイルスに比べ認知度が低い理由
一般に「ウイルス性食中毒=ノロウイルス」と認識されているのは、厚生労働省の統計でサポウイルスが「その他のウイルス」として扱われ、個別名で集計されないためである。サポウイルスとノロウイルスが同時に検出されている食中毒事例も複数あるが、行政検査ではまずノロウイルスを調べ、検出されればそれで「ノロウイルスによる食中毒」と結論づけられ、他のウイルス検査は省略されることが多い。ノロウイルス陰性でも「その他のウイルス」の検査が行われない場合や、食中毒という結論に至らず、報告されない事例もある。その結果、ノロウイルスの件数ばかりが多くなり、サポウイルスを含む「その他のウイルス」の実態が見えにくくなっている。
集計と検査体制の課題
寄生虫のアニサキス、クドア、サルコシスティスは2017年から個別集計されており、「その他のウイルス」より認知度が高まっている。同様に、サポウイルスも個別に集計され、ノロウイルスと同時検出が普及すれば、発生実態の把握が進むと考えられる。
サポウイルスへの対策と今後の課題
対策はノロウイルスと同様で、二枚貝や汚染水、汚染食品の摂取を避けることが基本である。ノロウイルスは85~90℃で90秒以上の加熱で不活化できるが、サポウイルスの加熱条件は未提示であり、今後の研究課題である。また、調理従事者を介した未加熱食品や加熱後食品の汚染を防ぐことも重要である。


