ファクトチェックが国内でも始まった!

[2017年10月12日木曜日]

“リスクの伝道師”ドクターKです。今月は海外において「フェイクニュース」というキーワードとともに活発化してきたファクトチェック活動が、いよいよ国内にも波及してきましたので、その話題についてお伝えし、食の安全・安心や健康情報に関する今後のファクトチェック活動についても考察したいと思います。まずは、国内でのファクトチェックの推進・普及を目的とする市民団体:「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」についてご紹介します:

◎FIJ(FactCheck Initiative Japan)とは
http://fij.info/about

筆者もFIJの発起人のひとりとして国内でのファクトチェック活動の推進・普及に関わることになったのだが、筆者自身のファクトチェックのメインターゲットは、世の中に氾濫する食や医薬/健康・医療に関する怪しいメディア情報となる。マスメディアはもちろん、ソーシャルメディア/SNSも含めたネット上のフェイクニュースは、社会に大きな悪影響を与え、一般消費者のリスク認知バイアスを助長することで風評被害をまき散らしているのが現状だ。

これらのフェイクニュースに対抗して、どのように事実検証を公開していくと公益性が高いのか、海外のファクトチェック団体(PolitiFact、FactCheck.org、WashingtonPostなど)の例も参考にしながら、FIJ独自のガイドラインを暫定的に設置した。また、FIJは今年9月より、First Draft NewsのAcademic & Research パートナーとなった。First Draftは、ファクトチェック団体ではないが、研究機関などと連携してインターネット時代の報道スキルの向上を目指す非営利団体で、FIJは、First Draftの知見やネットワークからの情報も活用しながらファクトチェックの質的量的向上を目指している。

FIJのファクトチェック推進活動の最初の実証実験として、タイミングよく(?)衆議院が解散され、総選挙が行われることになったことから「ファクトチェック総選挙プロジェクト」が開始された:

◎FIJファクトチェック2017総選挙プロジェクト
http://fij.info/archives/election2017

なぜこのタイミングで緊急にファクトチェックを推進するのかと思われるかもしれないが、実際、米国やフランスでの大統領選挙の期間中も、あらゆるフェイクニュースがメディア上をとびかい、有権者の投票行動に大きな影響を与えたと言われており、それに対抗するようにファクトチェック活動が活発化していったようだ。すなわち、どの候補者が当選するかによって、候補者本人ももちろん、支援者たちが優先したい生活・利害・イデオロギーなどが大きく左右されるため、カネを使ってでもフェイクニュースを流す人たちが、選挙期間中には増殖するということなのだろう。

この2017総選挙に関するファクトチェック記事が、本プロジェクトに参加登録したファクトチェッカーのメディアたちから報告されると、FIJの評価委員が独自のファクトチェック・ガイドライン(運営方針と記事化)に適合しているかどうかを評価し、適合とみなしたファクトチェック記事を上述のFIJポータルサイトに掲載していくというシステムだ(筆者も評価委員):

◎2017年総選挙ファクトチェックプロジェクトについて
http://fij.info/election2017-2
◎ファクトチェックのガイドラインについて
http://fij.info/gudlines

すなわち、ただ事実検証して記事をアップすればよいというわけではなく、国際的なファクトチェックの行動規範(International Fact-Checking Network,(IFNC)のファクトチェッカー行動規範(2016) =透明性・公開性の原則)にも準拠したFIJガイドラインに基づいて作成された記事のみを、FIJとしてレコメンドすることで、ファクトチェック記事の品質・正確性・透明性の向上を目指しているわけだ。そうすることで、事実に反する言説やフェイクニュース、根拠のない推測に基づいた見解、不正確でミスリーディングな情報などの発信者に対して、再度の事実検証と訂正記事の発信をうながすことが可能になってくると考えられる。

昨今のソーシャルメディアの発展・拡大によって、個人ブログやTwitterなど、たとえ小さな言説であってもネット上に事実と異なる情報が拡散することで、社会に大きな悪影響を及ぼすことは明白だ。SFSSでは、今回の「FIJ2017総選挙ファクトチェックプロジェクト」が完了したら、その後は食や医薬/健康・医療に関する怪しい情報をターゲットとして、ファクトチェック活動を推進していく予定だ。すでに予備実験的なファクトチェック活動はSFSSホームページ上で展開しているので、以下をご参照いただきたい(FIJのファクトチェック・ガイドラインに沿った活動はこれからになるので、これまでの活動は準備段階のものであることをご留意ください):

 ◎食のファクトチェック!
「トクホの大嘘」はホント?

http://www.nposfss.com/cat3/fact/01_tokuho.html

 ◎食の安全・安心Q&A
Q(消費者):遺伝子組換え作物(GMOs)が健康によくないという情報は、科学的に正しいのでしょうか?

http://www.nposfss.com/cat3/faq/q_07.html

◎食の安全・安心Q&A
Q(消費者):福島県産の農産物や食品の放射能レベルは気にすべき健康リスクなのでしょうか?

http://www.nposfss.com/cat3/faq/q_09.html

◎食の安全・安心Q&A
Q(消費者):食品添加物は身体によくないという記事をよく見かけますが、本当なのでしょうか?

http://www.nposfss.com/cat3/faq/post_59.html

以上、今回のブログでは「フェイクニュース」をターゲットとしたファクトチェックが、国内でも活気をおびてきたこと、さらにこのファクトチェック活動が食・医薬・健康の領域にも発展していく可能性について解説しました。SFSSでは、食品のリスク管理やリスコミ手法について学術啓発イベントを実施しておりますので、いつでも事務局にお問い合わせください:

◎食のリスクコミュニケーション・フォーラム2017
第4回『食品添加物のリスクを議論する』(10/22) @東大農学部

http://www.nposfss.com/riscom2017/index.html

また、弊会の「食の安全・安心」に関する事業活動に参加したい方は、SFSS入会をご検討ください(正会員に入会いただくと、有料フォーラムの参加費が1年間、無料となります)。 よろしくお願いいたします。

◎SFSS正会員、賛助会員の募集について
http://www.nposfss.com/sfss.html

(文責:ドクターK こと 山崎 毅)

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