食物アレルギー:子供たちの生命を守るのは誰?

[2014年2月12日水曜日]

「食物アレルギー?自分は特にアレルギーをもってないし、うちの子供(孫)も食物アレルギーはないので関係ありません」と思われている皆様へ。

学童期の食物アレルギーはここ9年間で1.7倍に増えており、食物アレルギーの子供たちへの健康リスクは上昇しているとのことで、あなたのご家族がいつ発症してもおかしくないし、お子様の友達が食物アレルギーをもっているかもしれないと考えると、この問題は決して「対岸の火事」ではない。

しかも、学校現場で報告された食物アレルギー症状の7.2%がアナフィラキシー・ショックと言われる生死をさまよう状態だったという。一昨年、調布市の小学校で、食物アレルギーのアナフィラキシー・ショックによる不幸な事故が発生し、小学生の女の子が命を落としたことをご存知の方も多いと思うが、もしあなたがその事故現場にいたとしたら、適切な対処ができただろうか?

もちろん、食物アレルギーをもつお子様の保護者であったり、学校の担任であったり、給食業務に従事する方であったり、担当の医師であったり、食品を供給する立場にある場合には、「食物アレルギー」に関してある程度の知識をお持ちではないかと思う。

それでもいま一度、「食物アレルギー」に関して詳しく学んでいただきたい。それが、子供たちの生命を守ることにつながる可能性があるからだ。

先日、東京大学農学部にて当NPO主催で開催した『食の安全と安心フォーラムⅦ~我が国における食物アレルギーのリスク管理と低減化策~』は、そんな「食物アレルギー」についての非常によい学びの場であった。
参加者のアンケート結果も含む、フォーラムの活動報告は以下で参照されたい:
http://www.nposfss.com/cat1/symposium_foodallergy.html

上述の食物アレルギー発症に関する疫学データは、実は本フォーラムにて昭和大学医学部小児科学講座の今井孝成先生のご講演でうかがった情報であるが、今回のフォーラムでは、今井先生のような臨床現場のお医者様からだけでなく、基礎研究の科学者(東京大学足立はるよ先生、近畿大学森山達哉先生)、学校給食の栄養教諭(杉並区立井草中学校青山純子先生)、食品開発担当者(低アレルゲン研究所小川正先生)と、各方面の専門家をむかえて、ご講演ならびにパネルディスカッションを展開していただいた。

食物アレルギーの基本的な原理について足立先生からご教授いただき、新しいタイプのクラス2食物アレルギー(花粉症アレルギーの患者さんで豆乳などの大豆製品にもアレルギーを発症するケース)については森山先生から詳しくご説明いただいた。青山先生からは、学校給食の現場で大変苦労されている食物アレルギー対策について具体的にご説明いただき、参加者からの反響が大きかったようだ(上述のアンケート結果をご参照のこと)。また、低アレルギー食品を開発している小川先生は、アレルギー患者さんたちに喜んでもらえる商品開発の情熱が伝わるご講演であった。

しかし、筆者にとって一番インパクトがあったのは、今井先生のご講演にて見せていただいたアナフィラキシー・ショックで苦しむ児童の動画であった。この映像は、子供たちの食にたずさわるすべての方々に見ていただきたいもので、食物アレルギーの学術啓発活動の重要性を再認識させられる内容と感じた。

「食物アレルギー」は、子供たちの生命にも影響する健康被害に直結した「食の安全」の重要課題である。食品偽装表示、原産地情報や現在の食の放射能汚染問題など、「食の安心」の問題とでは重大性や責任が比較にならない(もちろん消費者をあざむく表示が許されるという意味ではないことは自明である)。食品事業者もアレルゲンのわかりやすいラベル表示やアレルゲン混入防止策について、ヒトの生命を左右する重要事項との自覚をもって、より真剣に取り組むべきであろう。

当NPOでは、今回のフォーラムのような食の安全をテーマにした学術啓発イベントを、さらに積極的に展開していきたい。それによって不幸な健康被害が少しでも減り、子供たちの生命を守ることに貢献できれば幸いである。

(文責:山崎 毅)

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