食のリスクコミュニケーション・フォーラム2018
『消費者市民のリスクリテラシー向上につながるリスコミとは』
第2回テーマ:『残留農薬のリスコミのあり方』(6/24)開催速報
【開催日程】2018 年 6 月 24 日(日)13:00~17:50
【開催場所】東京大学農学部フードサイエンス棟 中島董一郎記念ホール
【主 催】NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)
【後 援】消費者庁、東京大学大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター、
一般社団法人食品品質プロフェッショナルズ
【参加費】3,000円/回
*SFSS会員、後援団体(団体あたり先着5名まで)、メディア関係者は参加費無料
3人の専門家より、それぞれのテーマに沿ったご講演をいただいた後、パネルディスカッションでは会場の参加者からのご質問に対して活発な意見交換がなされました。
【プログラム】
13:00~14:00 『リスクアナリシスで考える残留農薬』
畝山 智香子(国立医薬品食品衛生研究所)
14:00~15:00 『食品企業の品質保証とリスコミ ~ウーロン茶葉の残留農薬品質保証を事例として~』
冨岡 伸一(サントリーマーケティング&コマース(株))
15:00~15:20 休憩
15:20~16:20 『毒性評価の現場からリスク・コミュニケーションを考える』
青山 博昭(一般財団法人残留農薬研究所 業務執行理事・毒性部長)
16:20~17:50 パネルディスカッション
『市民の食の安心につながるリスコミとは』
進行:山崎 毅(SFSS)、パネラー:各講師
18:00~19:30 懇親会
畝山智香子先生
冨岡伸一先生
青山博昭先生
*講演要旨ならびに講演レジュメは以下のとおりです:
① 畝山 智香子(国立医薬品食品衛生研究所)
『リスクアナリシスで考える残留農薬』
食品はもともと無条件に安全なものではなく、食品の安全性はリスクアナリシスにより確保されるがこのことが広く国民に浸透しているとは言い難い。また食品安全以前に十分な量の食品を確保すること(食糧安全保証)が必要である。農薬については食品添加物と並んで消費者が食品中に存在して欲しくないと認識しているものの代表例である。リスクアナリシスで考える残留農薬の安全性 と、消費者が認識している安全性とのギャップについて検討してみたい。
② 冨岡 伸一(サントリーマーケティング&コマース(株))
『食品企業の品質保証とリスコミ ~ウーロン茶葉の残留農薬品質保証を事例として~』
社内若手へのヒアリングで約30%が「リスク=危険」と応えた。そして「リスクがある、あるいは、リスクがない」という会話が交わされている。このように食品企業の社内リスコミも必要なのが現状であり、お客様へのリスコミはさらに重要なものと考えている。「農薬」「食品添加物」「遺伝子組換食品」 などが多くのお客様に不安を与えるという社内認識に基づき 2007 年末のギョーザ事件以前は、たとえ 安全性を説明しようとしても「農薬」という言葉はHPなどで使用不可であった。 サントリーは 2006 年の残留農薬ポジティブリスト化対応として中国産ウーロン茶葉の残留農薬分 析センターを設立。日本向け茶葉の全ロット分析によるお客様へのアカウンタビリティ体制を整えた が、社外訴求ができたのは 2008 年からである。幸いにも 2012 年の 30 社以上 100 製品以上に及んだ ウーロン茶葉・製品の大回収での影響は無かった。この結果を導いたのはリスク認識・リスク低減活動
である。日本向け茶葉分析のみならず中国国内の茶葉の分析や茶葉生産者(農家・加工者)の調査・指 導など地道なリスク低減の取り組みを紹介する。
③ 青山 博昭(一般財団法人残留農薬研究所 業務執行理事・毒性部長)
『毒性評価の現場からリスク・コミュニケーションを考える』
実験動物を用いて農薬の毒性評価に取り組んでいる私たちには,少なからぬ数の市民が様々な農産物の安全性に漠然とした不安を抱いているとの指摘を受けたり,無農薬栽培された野菜が生産コストを度外視して称賛されているとの情報に接したりするたびに,何故そのようなことになるのかとの疑問が湧く。その理由は未だ私たちにも分からないが,メディアや市民に対して私たち専門家が毒性評価の実態を十分に説明できていないことも一因かもしれない。今回のセミナーでは,農薬の毒性評価やその結果に基づくリスク評価の実情を可能な限り平易な言葉で説明して,農薬の安全性に 関する市民の疑念が少しでも晴れるよう努めたい。
*なお、参加者アンケートの集計結果は後日掲載します。
(写真・文責:miruhana)