学校給食での食物アレルギー対応 (2021年9月2日)

塩塚宏冶


多摩市立多摩中学校 栄養教諭
塩塚宏冶

【学校給食に関する基本的な考え方】
 給食施設・設備、食物アレルギーのある児童・生徒の状況等に基づき、医師の指示に従い、必要最小限の食物除去を行いながら、適切な栄養素の確保、生活の質を維持するよう配慮し、食物アレルギーの児童・生徒への給食を提供している。学校給食は、食物アレルギーのある児童・生徒と他の児童・生徒が、発達段階に応じて、互いの違いを認め合い助け合う中で、みんなが同じように給食時間を楽しみ、食を通して成長していくことを目指しています。 また、食物アレルギーについて正しい知識を身に付けるよう、学校の教職員等へ研修等を行っています。

【基本的な対応方針】
 各小中学校の給食は、単独・親子・センター方式等それぞれの自治体によって対応の違いがある。学校の給食施設・設備、食物アレルギーのある児童の状況等に基づき、対応可能な範囲で、食物アレルギーのある児童へ給食を提供する。なお、中学生は各自で除去対応を行うことが多い。

学校給食における食物アレルギー対応
(1)対応レベルについて
給食での対応レベルは、小学校は、原則として、レベル3(除去食対応)対応としている。 中学校は、原則として、レベル1(詳細な献立表対応)対応としているところが多くみられる。
(2)献立作成について
① 原因食物を除去しやすい献立とする。鶏卵、乳、小麦については、安価で重要な栄養源であり、学校給食において必要な食物である。除去を必要とする児童がいる場合、原因食物を取り除きやすい調理方法を検討行っている。新規発症を引き起こしやすい食物の使用に配慮する。 種実類、キウイフルーツ等、新規発症を引き起こしやすい食物の使用・提供については十分に配慮する。
② 作業動線・工程に配慮した献立とする。調理作業や配膳スペースが限られているため、コンタミネーションを避けるための作業動線や作業工程の工夫を献立の時点で考慮する。
 ※食品を製造する際に機械や器具からアレルギーを起こす物質が意図せずに混入すること
「ピーナッツ」、「そば」、「一部の種実類(アーモンド、カシューナッツ、くるみ、けし、ピスタチオ、ブラジルナッツ、ヘーゼルナッツ、ペカンナッツ、マカダミアナッツ、まつ)」は使用しない。対象児童の除去品目や対象人数等により、原因食物の使用頻度を配慮することで、除去食のある日数を減らす工夫を行う。原因食物を使用する場合は、献立名で主な原因食物がわかるような配慮など、児童・生徒の目線にたった工夫を行う。新規発症を引き起こしやすい食物を給食で提供する場合は、校内の対応委員会で検討し、さらに、教職員で危機意識の共有を図るとともに、発症に備え十分な緊急対応体制を図っている。
(3)給食の除去対応について 完全除去を基本とする。
ただし、鶏卵及び調味料の取扱い、コンタミネーション対応については、原因食物の特性、食物アレルギーのある児童であっても基本的に摂取可能なことや重症な食物アレルギーでなければ除去の必要がないことを踏まえ、適切な栄養素の確保・生活の質の維持と併せて、調理上の負担の軽減を図るため、症状等に合わせて以下のように個別対応を行う。
(4)アレルギー対応の単純化について
原因食物の異なる児童が複数いる場合は、ひとつの料理について、該当する原因食物をすべて除去したひとつの対応食とする。給食室での対応が困難な場合は、対応委員会で対応を検討する。決定のうえ、家庭から弁当や代替食の持参を依頼する。
(5)情報の管理
食物アレルギー対応が必要な児童・生徒の情報は、全教職員が正しく理解し共有する。
(6)トレイ・食器について
学校では、給食で対応が必要な児童へ重点を置き、誰でも分かりやすい対応により学級全体で食物アレルギーに配慮した行動を目指すため、トレイ・食器の色分けにより視覚的にも分かりやすくする。持参する代替品や喫食しない料理に、空の対応食器を用意する。

給食アレルギー事故防止には細かい対応が必要
 給食センターで一度に大量に作られることも多い給食では、調理場や器具を分けてアレルゲンが混入しないようにするコンタミネーション対応を行っているが。しかし、除去食専用の調理場を造るのが最善策となっている。おかわりで起きてしまった事故に学び、担任だけでなく管理栄養士や担任など複数で何重にもチェックをする体制にしておけば、より事故を防ぐ可能性が高い。ただし、短い給食の時間に、多くの児童を見ながらどこまでこまやかな対応を取れるかという現実的な問題もある。
 また、アレルギー症状が出た時の対処法を把握しておくことも大事である。

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