惣菜製造業におけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のポイント (2022年2月11日)

豊福 肇


山口大学共同獣医学部
豊福 肇

1.はじめに
 平成30年6月に食品衛生法が大幅に改正され、原則、全ての食品事業者がHACCPに沿った衛生管理の実施が義務付けられた。この義務化された衛生管理の具体的な内容は、食品事業者が従前から実施していた施設・設備の衛生管理等の一般衛生管理を引き続き着実に実施すること、また、食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取り組みであるHACCPに沿った衛生管理を導入することの2本の柱からなる。

2.HACCP導入のアプローチ
 HACCP導入にあたっては2つのアプローチがある。
 1つ目は国際標準であるコーデックスのHACCP7原則に基づき、食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取り組み(HACCPに基づく衛生管理、HACCPプランの作成)を行い、実施するものである。
 2つ目は、1が難しい小規模食品事業者等は、各事業者団体が作成し、厚生労働省が確認した手引書を活用して、簡略化された対応を認める”HACCPの考え方を取り入れた衛生管理”を実施するもので、対象となるのは小規模事業者(食品の製造に携わる者が50名未満)等である。この2つの衛生管理を合わせて「HACCPに沿った衛生管理」と呼んでいる。
 いずれのアプローチにおいても、今回の改正の施行後に営業者が実施すべきことは、
1)「一般的な衛生管理」及び「HACCPに沿った衛生管理」に関する基準に基づき衛生管理計画を作成し、従業員に周知徹底を図る、2)必要に応じて、清掃・洗浄・消毒や食品の取扱い等について具体的な方法を定めた手順書を作成する、3) 衛生管理の実施状況を記録し、保存する、4)衛生管理計画及び手順書の効果を定期的に(及び工程に変更が生じたときなどはその都度)検証し(振り返り)、必要に応じてその内容を見直すことである。

3.総菜協会の手引書
 総菜業界においては、社団法人日本総菜協会が小規模な総菜工場向けHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書を作成している。手引書は①運営体制、②一般衛生管理、③工程管理(CCP)、④文書管理、ひな型で構成されている。
(1)一般衛生管理
 施設環境の衛生管理として、1)施設・設備の衛生管理、2)使用器具の衛生管理、3)使用水等の管理、4)ネズミ・昆虫対策、5)廃棄物・排水の取扱い、6)食品等の取扱い、7)検食の実施、8)情報の提供、9)回収・廃棄、また食品取扱者の衛生管理として1)食品取扱者の健康管理、2)食品取扱者の衛生管理をカバーしている。
(2)工程管理
 工程管理(CCP)については、1)加熱しない惣菜では重要なハザードと管理手段は①野菜等の病原微生物と殺菌、②アレルゲンと正確な表示、③工程での金属片と金属検出機、2)加熱後に包装する惣菜及び包装後に加熱する惣菜での重要なハザードと管理手段は①非芽胞形成菌と加熱、②芽胞形成菌と冷却、③アレルゲンと正確な表示、④工程での金属片と金属検出機となり、その管理のポイントが示されている。
加熱しない製品では:
①野菜等の病原微生物と殺菌では、原材料の殺菌作業をおこなう際に、殺菌に使用する薬剤や希釈液が決められた濃度・時間等の条件で殺菌がおこなわれているかを確認し記録する。
②アレルゲンと正確な表示では、製品にラベルを貼りつける際に、製品に異物や包装の破れ等の異常がないこと、ラベル表示内容が正確であることを確認し、使用したラベルをノート等に貼って保管する。
③工程での金属片と金属検出機では、動作確認をした金属検出機にすべての製品を通過させ、喫食した人が口唇等にけがをしないように、金属片が混入した製品を排除するとともに、テストピースを用いて動作確認した記録を保管する。
加熱する製品では:
①製品への加熱が不十分とならないよう、最も火の通りづらい製品の中心部分の温度と加熱時間を確認し、記録する。
②製品の冷却が不十分とならないよう、製品の特性にあわせて冷却時の製品の中心部分の温度と冷却にかかった時間を確認し、その結果を製造日報等へ記録する。
(3)定期的な確認
 一般衛生管理及び工程管理を実行する中で、正確に実施されているか または製品の安全性を確実に管理できているか一般衛生管理及び工程管理の記録の確認並びにクレーム内容の確認を通して検証するとともに、衛生管理計画の修正の必要性も判断する。

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