食品安全確保に向けての社会的取り組み (2015年5月8日)

局  博一東京大学大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター特任教授
局 博一

食品安全基本法が制定(平成15年)されてから12年目を迎えました。食品安全に関わる法律は、従来より「食品衛生法」、「薬事法」、「農薬取締法」、「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律」など数多く存在しますが、食品安全基本法は、食品の安全性の確保のために必要な国・地方公共団体・食品関連事業者の責務と消費者の役割、中立で公正な食品健康影響評価を包括的に位置づけている点に特色があるといえます。
とくに食品健康影響評価に関しては管理機関から独立した食品安全委員会を置くことが義務付けられた点は大きな特徴といえます。食品安全委員会が出来たことで、わが国の食品安全行政の拠り所となる食品安全基準の作成等が効率よく進められるようになり、また正確な食品安全情報を国民に向けて発することができるようになったことは大変有意義であったと思われます。とくに行政機関をはじめ食品関連事業者、消費者の食品安全に対する最近のおよそ10年間における意識の高まりと努力は目を見張るものがあります。
一方、食品健康影響評価を正確かつ迅速に行うためには、様々な科学的データが必要になりますが、評価対象事項の中には研究報告が少ないために科学的評価が容易でない場合もあり、そのような場合は国民への情報提供量に限界が生じてきます。そのため、食品の健康影響評価に関わる毒性学や疫学、リスク評価や施策等を研究するレギュラトリーサイエンス分野の発展と人材育成、食品安全検査システム等に対して国を挙げての支援が強く求められます。
食品安全問題は国民の健康と財産、国内外の社会経済に大きな影響を与えることは明白であり、健全な社会が取り組むべき最優先事項と思われます。

以上

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