牛乳の安全を保証する (2011年10月16日)

東京大学教授・農林水産省食料農業農村政策審議会家畜衛生部会委員 眞鍋 昇

「牛乳は国産だ!」というテレビコマーシャルにあるように私たちが毎日飲んでいる牛乳は国内で生産されています。
牛乳は、国民の健康増進、特に赤ちゃんの成長と健康に欠かせない良質で重要な食品で、年間約850万トン生産
されている牛乳の半分は北海道で生産されていますがその大半はバターやチーズに加工され、毎日飲んでいる生乳
(年間約400万トン)の多くは東北圏と関東圏で生産されています。
草食動物の乳牛は、牧草だけだと毎日約50キロ、穀物を与える場合は毎日約10~20キロの牧草と約5~10キロの
穀物を食べて、約20~30キロの牛乳を生産します。今年3月の東日本大震災に起因する福島第一原子力発電所
事故のため、東北圏と関東圏の牧草が放射性核種で汚染されてしまいましたので、安全な牛乳を生産できる飼料や
飼養管理方法を具体的に示すために、福島第一原子力発電所から南西約130キロに位置する東京大学農学生命
科学研究科附属牧場では、牧草中の放射性核種の牛乳への移行を調べています。
放射性核種で汚染されてしまった牧草(汚染した生の牧草を乾燥させた後プラスチックフィルムでパッキングして乳酸
発酵させた飼料用ヘイレージ)だけで乳牛を飼育し、牧草に含まれる放射性核種がどの程度牛乳中に混入するのか
調べた結果、飼料汚染レベルが暫定基準値以下であれば牛乳中の放射性核種レベルは1ベクレル/kg以下に保たれ
ることが分かりました。さらに、汚染牧草の給与を止めた後、放射性核種を含まない飼料だけを与えると、牛乳の放射
性核種レベルは2週間以内に検出限界以下になることも確認できました。

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乳牛

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牛乳の採材風景

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