食のリスクコミュニケーション・フォーラム2018
『消費者市民のリスクリテラシー向上につながるリスコミとは』
第4回テーマ:『遺伝子組換え作物のリスコミのあり方』(10/28)開催速報
【開催日程】2018年10月28日(日)13:00~17:50
【開催場所】東京大学農学部フードサイエンス棟 中島董一郎記念ホール
【主 催】NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)
【後 援】消費者庁、東京大学大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター、
一般社団法人食品品質プロフェッショナルズ
【参加費】3,000円/回
*SFSS会員、後援団体(団体あたり先着5名まで)、メディア関係者は参加費無料
3人の専門家より、それぞれのテーマに沿ったご講演をいただいた後、パネルディスカッションでは会場の参加者からのご質問に対して活発な意見交換がなされました。
【プログラム】
13:00~14:00 『リスクのないリスコミは難しい』
小泉 望(大阪府立大学 生命環境科学研究科 教授)
14:00~15:00 『遺伝子組換え食品の表示をめぐる課題』
佐々 義子(くらしとバイオプラザ 21 常務理事)
15:00~15:20 休憩
15:20~16:20 『新しいテクノロジーの受容はいかに進むか―国民の理解は必要か?』
小島 正美(食生活ジャーナリストの会 代表幹事)
16:20~17:50 パネルディスカッション
『市民の食の安心につながるリスコミとは』
進行:山崎 毅(SFSS)、パネラー:各講師
18:00~19:30 懇親会
小泉望先生
佐々義子先生
小島正美先生
*講演要旨ならびに講演レジュメは以下のとおりです:
① 小泉 望(大阪府立大学 生命環境科学研究科 教授)
『リスクのないリスコミは難しい』
日本は大量の遺伝子組換え作物を輸入、消費している。
科学的には遺伝子組換え食品に対する安全性に問題があるとは考えられず、遺伝子組換え作物の消費が始まって以来20年以上が経つが明確な健康被害は報告されていない。しかし、消費者の遺伝子組換え食品に対する忌避感は根強い。一日摂取許容量のような値が設定できないためリスクを明示できず、遺伝子組換え食品の安全性に関する不安の払拭は却って難しい。
遺伝子組換え食品に関する議論は往々にして食品の安全性ではなく遺伝子組換え作物の農業形態への影響などへと飛躍する。
遺伝子組換え作物について概説するとともに、遺伝子組換え食品に対する消費者の様々な懸念について紹介する。
② 佐々 義子(くらしとバイオプラザ 21 常務理事)
『遺伝子組換え食品の表示をめぐる課題』
2017年度、消費者庁は遺伝子組換え食品の表示見直しを検討した。
消費者団体は、義務表示の対象食品の拡大と、「遺伝子組換えでない」表示と遺伝子組換え原料混入の実態との乖離解消を求めていた。対象拡大はなく、検出限界以下のときだけ「遺伝子組換えでない」と表示することが決まった。
現在、5%以下の場合、どのような表示が適切か議論されている。
日本は、遺伝子組換え原料を飼料や食用油として大量に輸入・消費しているが、その事実が十分に浸透していない。組換え原料の危険性の警告表示と誤解している人も多い。
どんな表示やコミュニケーションが必要かをご一緒に考えたい。
③ 小島 正美(食生活ジャーナリストの会 代表幹事)
『新しいテクノロジーの受容はいかに進むか―国民の理解は必要か?』
「新しいテクノロジーを普及させるためには、国民の多数の理解が必要」というのは本当だろうか。
さまざまなリスクコミュニケーションは、結局のところ、国民の理解度を高める目的で行われているが、仮に国民の7割が「理解した」「まあ理解した」と答えたとしても、はたして、それで新しいテクノロジーは普及するのかといえば、過去の歴史を見れば、そういう理解度と普及に関連はない。
米国でGM作物が1996年から栽培されているが、これは米国民の理解が高かったからではない。むしろ、現在のほうが反対運動が高まっている状況を見れば、米国でまず普及したのは、企業が思い切ってモノを生産・販売し、生産者がそのメリットに気づき、普及させたに過ぎない。
反対はあっても、モノをつくる人と消費する人がメリットを享受して、お互いに共存すれば、テクノロジーは徐々に普及していく。
どの時代にも新しいテクノロジーだった飛行機、車、ワクチン、農薬、日本のGM作物、スマホ、BSE検査、食品添加物、照射食品の分野でどのような経過をたどったかを検証し、普及させるために何が必要かを議論したい。
*なお、参加者アンケートの集計結果は後日掲載します。
(文責・写真撮影:miruhana)