エスビー食品株式会社

商品部 
高山大介

■エスビー食品の持続可能性への取組み

 2015年は近代以降の人類の歴史で大きな転換点になった年だと言われています。それは「パリ協定」と「持続可能な開発目標(SDGs)」という二つの枠組みが国際社会で合意され、経済や社会に「持続可能な形での発展」という視点がもたらされたことによるものです。
 パリ協定は国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)で合意された気候変動に対する取組みで、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より充分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることと、そのために温室効果ガスの排出量をできる限り早くピークアウトさせることが謳われています。一方、持続可能な開発目標(SDGs、通称グローバル・ゴールズ)は国連持続可能な開発サミットにおいて全会一致で合意された、国際社会が2030年までに貧困を撲滅し、持続可能な社会を実現するための重要な指針です。SDGsは17のゴールと169のターゲットから構成され、「誰一人取り残さない(No one will be left behind)」という言葉でその理念が象徴的に示されています。

 私たちエスビー食品は1923年に山崎峯次郎が日本で初めて香辛料から国産のカレー粉を作り上げることによって創業しました。現在では「食卓に、自然としあわせを。」を企業理念として、香辛料をはじめカレールウやチューブ入りわさび、フレッシュハーブ(生鮮品)などの様々な食品を製造販売しています。
 私たちが取り扱っている香辛料は熱帯地域をはじめとする世界中の様々な国から輸入をしており、気候変動問題やSDGsの多くのゴールとも密接に関係しています。
 このことからエスビー食品では、これまでの安全・安心の確保や品質向上に加えて、持続可能性への取組みの一環として、当社にとって重要な原料・資材である「香辛料」「パーム油」「紙」に関する「持続可能な原料調達のコミットメント」を制定しました。これは私たちエスビー食品が2023年に創業100周年を迎えるにあたっての社会的役割を明確にするとともに、次の100年に向けた責任を表明したものです。

持続可能な調達に関するコミットメント(2019年5月22日公表)

エスビー食品グループは持続可能な原料調達のために、次のマイルストーンを設定します。
香辛料:主要香辛料※について、2030年を目標として安全・人権・環境・コンプライアンスに配慮した持続可能な調達を目指します。また、フェアトレード・有機認証香辛料の調達や契約栽培の拡大も引き続き進めていきます。
パーム油:エスビー食品グループの全製品に使用しているパーム油を2023年までに100%RSPO認証油に切り替えます。
紙:エスビー食品グループのカレーなどのルウ製品、レトルトおよびチューブ入り香辛料のパッケージに使用している紙を2023年までに100%FSC認証紙に切り替えます。
※こしょう・唐辛子・マスタード・パセリ・ローレル・オレガノ・わさび

 香辛料は私たちにとっての基幹原料であるとともに、その多くが開発途上地域で栽培されています。エスビー食品ではこれまでも「有機スパイスシリーズ」でフェアトレード認証を受けた香辛料の調達を進めてきましたが、今後は自社の主要香辛料について、環境や人権、生産者のレジリエンスに配慮した取組みを産地と協働してさらに深めていきます。
 パーム油はアブラヤシの実から採取される植物油脂ですが、近年その栽培場面における環境破壊や人権侵害の問題が提起されています。エスビー食品は2017年に「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」の会員となりました。今後、自社で使用しているすべてのパーム油を持続可能なものに切り替えていきます。
 紙はカーボンニュートラルであることや軽量・リサイクル適性などの特徴を持つ優れたパッケージ素材ですが、一方で課題となる森林破壊を防ぐためには適切に管理された木材やリサイクル原料から作られている必要があります。そのためエスビー食品では、まず商品パッケージに使用しているすべてのボール紙を、「森林管理協議会(FSC)」の認証を受けた紙に切り替えます。

 エスビー食品ではこのほかにも詰め替え用香辛料をはじめとする商品パッケージのリデュース・リユース・リサイクルへの取組みや、食物アレルギー配慮商品、ハラール認証商品等の、多様なお客様の声にお応えする商品の開発にも取り組んでいます。

 日本は食料自給率が37%(平成30年、カロリーベース)であり、私たちの食卓は世界と密接につながっています。地球環境や社会の持続可能性を考えることは、すなわち私たち自身の持続可能性について考えることでもあります。新しい年を迎えるにあたって、より倫理的(エシカル)な食事に想いを馳せてみるのもよいかもしれません。

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