今でこそあちらこちらで見かける高級食パン専門店ですが、その先駆けとして、2013年大阪の繁華街の外れに1号店を構えたのが「乃が美」の始まりです。今現在では60店舗を超え、商品名でもある「『生』食パン」という食パンの新たなるジャンルを全国に拡げ続けています。
「ご家庭の食卓にちょっとした贅沢」をお届けするとともに、時には毎日お召し上がりいただくものとして、「おいしく」かつ「安全で安心できる」製パンを心がけています。
『乃が美』の「生」食パンは高級食パンによくある日本産小麦でなく、カナダ産1CW等級ブレンドの小麦粉を使っています。とはいえ日本の農家さんが作るお米と同じくらい手間暇かけて作られた小麦は、焼き上がりの香りが抜群で、それでいてすっと溶けるような理想的な柔らかさに仕上げてくれます。加えてかくし味の蜂蜜が、ほのかで上品な甘味ある奥行を作り出し、パン耳にまで香ばしい甘さを与えます。
このようなパンを実現するため、衛生キャップなど基本的な異物混入対策だけでなく、カメラ監視や定期的衛生報告を義務付けた工場で、ふつうの食パンの倍以上の時間で生地を練り上げ、通常の半分位の時間で「生地はしっとり耳まで柔らかく」焼き上げます。あとはオーブンから取り出せば出来上がりのところを、乃が美ではすぐに扇風機で表面だけ時間をかけて冷まします。この他店ではあまり見られない「ほどよく冷ます」工程が、何もつけないでそのまま食べられる「生」食パン完成への最後のひと手間となります。
唯一無二の食品ブランドを目指す乃が美の生食パン誕生の経緯といたしましては、幼い頃に家庭の事情から食べることに苦労した創業者が、おいしいものをお腹いっぱい食べてもらえる場所をつくろうと、飲食店をはじめたところから始まります。そこから20年以上にわたって、さまざまな業態で経営したものの、飲食店は流行や世情にどうしても左右されてしまい難しいものでした。ただ「どうせなら多くの人に愛されて、歴史に残る日本一のものをつくりたい。」という思いが日増しに膨らんできました。
「長く愛されるものってなんだろう」そう考えたとき、頭に浮かんだのは2つのことでした。1つはライフワークとして続けている老人ホームへの慰問中に聞いた「食べているときと笑っているときが一番幸せ。でも朝食に出るパンは耳が固くて食べられない」というおじいちゃん、おばあちゃんの言葉。そして2つめは、卵アレルギーで食べるものに制約がある我が子が食べていたパサパサのパン。そこから行き着いたのが「ふわふわの柔らかい食パン」だったのです。
卵を一切使わないのに、ちぎってそのまま食べられるほど柔らかくて、ほんのり甘い。目指したのはそんな究極の食パンでした。しかし、いくら飲食の経験はあってもパンづくりはまったくの素人。0からのスタートでした。当時の部下と共に粉の種類から材料の配合やミキシングのタイミング、焼く温度と時間を何度も変えながら試行錯誤を繰り返し、2年かかってついに、「柔らかさ」「きめ細やかさ」「甘味」「香り」すべてにおいて納得のいくパンが完成しました。
ミキシングされた生地はトロトロになったお餅のようなテクスチャーで、焼き上がりは「腰折れ」に近いぎりぎりの柔らかさ。どちらも通常のパン職人の常識では考えられないことでしたが、結果としてこれまでにない食パンが生まれました。パンに対して先入観のない素人だったからこそ、たどり着けた答えかもしれません。
乃が美の「生」食パンは「日本の食パン名品10本」に選ばれ、「パン・オブ・ザ・イヤー 食パン部門金賞受賞」など各メディアでも取り上げていただき、多くの人に乃が美の食パンを知ってもらえるようになりました。
しかしながら、まだまだ私たちは満足していません。目指すのは全都道府県にパン工場を併設した店をつくること。そして、すべての地域の人たちに乃が美を「地元のパン屋さん」と思ってもらうことです。そのためには絶対に大量生産はせず、一つひとつ手づくりで焼きあげた食パンを大切にお届けしています。
歴史に残る日本一の食パンブランドを目指す乃が美の歩みは、まだまだはじまったばかり。これからもお客様に喜ばれる商品づくりに精進してまいります。