錠剤・カプセル状の健康食品の品質と健康被害について (2020年12月8日)

宗林さおり


独立行政法人 国民生活センター
宗林さおり

1.はじめに
 機能性を謳える商品には特定保健用食品および機能性表示食品等があり、この2つは機能性の謳える程度はほぼ同じであるが、特定保健用食品は第3者による安全性・機能性審査があり審査という点では両者では大きな違いがある。機能性表示食品制度は規制改革会議に押される形で制度設計され、事業者の責任において表示を裏付ける資料をそろえて届け出をする仕組みで、2015年から始まったにも関わらず、商品数は非常に多い。

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 一方、国民生活センターに寄せられる苦情は機能性表示食品が創設されたり、定期購入の問題が大きくなったりしたことにより急増している。また、それを摂取したことによって何らか具合が悪くなったという事例も増加しており、最近の5年間で何等か身体に影響があったとの申し出が3倍となっている。場合によっては薬物性肝障害等を起こした例もあるため、食品といえども症状が出た場合には直ちに摂取をやめることが肝要である。

2.品質(崩壊性)

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 品質面では、2018年に100銘柄の錠剤・カプセルの健康食品を対象として医薬品と同じ方法で崩壊性試験を行ったところ、42銘柄が崩壊しなかった。これまで度々異なる健康食品で試験を実施し、毎回崩壊しない銘柄が出ている。健康食品としての方法を定めるということも考慮しつつ、品質的に一定の方法で崩壊するように管理すべきであろう。

3.機能性成分の量
 機能性成分について、例えばEPA等の場合、「血中の中性脂肪を低下させる機能が報告されています」と表示されるが、1日摂取目安量あたりに含まれるEPAの量は商品によって大きく差がある。目安量より多めに食べれば医薬品に近い量がとれてしまうものから、少ないものではその1/10程度のものもある。これらが同じ機能性を示す言葉で表示されているが、この状態であると、実際に消費者が商品の選択をする際にはどの商品を選択すればいいのか、また健常人における適用量は定まっていないままであるため、このあたりは早急にアカデミアによる議論が必要と思われる。

4.新しい手口
 最近、2型糖尿病薬であるGLP-1(注射薬)をオンライン診療で入手し痩身用に消費者が使用し副作用が出ている事例がみられる。もともとクリニックの方が痩せる旨をネットで謳い顧客を集めているが、GLP-1を痩身に使用することは日本において承認されておらず、目的外使用であること。また、自己注射で副作用も発生するおそれもあることから糖尿病学会からも「痩身目的で使用しないよう」との意見である。このような危険を伴う自由診療等には消費者は注意をしてもらいたい。

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