お客様の健康を第一に考えて減塩製法に変更
当社は、長野県飯田市にて農家の冬の副業として製造されていた「凍り豆腐」(こうや豆腐)の工業的製造及び販売を目的として昭和25年に設立されました。
「品質第一」を経営理念の先頭に掲げ、平成27年には国際的な食品安全マネジメントシステム「FSSC22000」の認証を取得し、「安全」「安心」な製品の提供を通じてお客様の快適で健康な食生活の貢献を目指しています。
■長野県の食塩摂取量
平成22年の調査では、日本の平均寿命は男性が79.59歳、女性が86.35歳であるのに対して長野県の平均寿命は男性が80.88歳、女性が87.18歳で男女共に全国1位となっています。男性は1990年以来全国1位の座を維持して、女性は5位以内に入り続けています。
長寿県としてトップを走る長野県ですが、昭和50年代までは、高血圧などを原因として引き起こされる脳卒中の死亡率が全国でも有数のワーストランキング常連県で、生活習慣の改善が健康課題とされていました。
長野県は味噌や漬物が特産品で、食塩を使った保存食が定着しており、知らず知らずのうちに食塩が過剰に摂取されていました。減塩の進んだ現在でも長野県の食塩摂取量は10.6g/日で全国男女平均10.2g/日に対して依然多い状況です。
■減塩への取組
食塩摂取量の多い長野県では、減塩への取組が積極的に推進されてきました。その一例が1981年から1983年に実施された「県民減塩運動」です。この運動は、食品業者、マスコミ、栄養士会、食生活改善促進協議会など官民一体となって進められました。味噌汁は具たくさんで1日1杯、薄味を心がける 、麺類の汁は半分以上残す、漬物は小皿で1日1回までなど、具体例を提示して身近なところから無理せず減塩を意識するように推進されました。県が1980年に調査したところ、1日平均の食塩摂取量は15.9gでしたが、この運動により1983年の調査では11gまで低減されています。
そのような活動を推進している長野県に所在する当社においても、減塩への取組を推進しています。弊社主力商品の凍り豆腐では、製法を約40年ぶりに見直すことでナトリウムを従来品より95%減少させることに成功しました。この製法は凍り豆腐の膨軟剤に使用していた重曹(炭酸水素ナトリウム)を炭酸カリウムに変更することで凍り豆腐中に潜在的に含まれているナトリウムを1枚(16.5g)当たり68mg(食塩相当量約0.2g)から1.2mgにまで低減することができました。弊社は年間およそ2億枚の凍り豆腐を製造しておりますので、約40tの塩分(ナトリウム換算)を低減した事となります。また炭酸カリウムを使用することで、体内の余分な塩分を排出する効果が期待されるカリウムを従来品の5mgから約25倍の129mgの摂取が可能となりました。この製法の確立により栄養・健康に配慮した食品の開発・普及の面での功績が評価され、第38回食品産業優良企業等表彰にて農林水産大臣賞を受賞いたしました。また、この製法は従来の凍り豆腐に比較してカリウム含量が飛躍的に改善されている凍り豆腐及びその製造方法として特許申請中です。
また、即席みそ汁「生みそずい」では、味の薄さにより遠慮されがちな減塩製品のなかで塩分(Na換算)を従来品より50%オフした製品を開発しました。即席みそ汁従来品の塩分は1食約2gです。これを半分の1gにまで低減しながら素材の組合せによっておいしさをそのまま維持し、従来品に劣らないおいしさを実現しています。この製法は食塩の減量により低減する味を補完する方法として特許申請中です。
■食を通じて健康に貢献
凍り豆腐が健康によいことは、長きにわたる食経験により知られていましたが、エビデンスを明らかにしようと推進をしており、当社も会員の「こうや豆腐普及委員会」を通じて凍り豆腐のたんぱく質の健康機能性に関する研究成果を発表してきました。
これまで、こうや豆腐を食べる事で中性脂肪の上昇を抑えることや、食べ続ける事で血中コレステロールの濃度、特に悪玉と呼ばれるLDL-コレステロールが減少する事が報告されています。さらに、凍り豆腐の含め煮を3ヶ月間摂食することでヘモグロビンA1c(長期的な血糖の指標)が低下するという研究報告もありました。
今後も健康に寄与できる製品を開発するとともに、健康機能を明らかにし発信していきながら、お客様の健康な食生活に貢献していく所存です。
【文責:土佐 昌資(旭松食品(株)販売企画課)】