私たちは、日常の暮らしで水を使わない日はありません。使って汚してしまった水を再びきれいな水に循環させて自然界を守ることは、私たちの健康を守ることにつながります。生活排水、工業排水、農業排水など排水処理の水量は年々増加し、それとともに発生する汚泥量も着実に増加しています。その汚泥処理について一層の効率化や省エネルギー化が求められています。ヒキタ工業は、主に食品工場から排出される排水処理施設から発生する大量の有機性汚泥の効率的処理を通じて、自然にやさしい循環型事業を目指しています。
≪従来の汚泥処理の問題点≫
「食品工場から排出される排水の多くは、家庭排水に比べて生物化学的酸素要求量(BOD)や懸濁物質量(SS)などの指標で示される汚濁度が高く、そのまま公共用水域や下水道などに放流するにはそれぞれの水質基準を遵守することはできません。したがって、物理化学的処理や生物学的処理を行い、汚濁物質を除去した後、放流することとなります。排水処理により発生する汚泥は、更に濃縮するか加えて脱水した後、産業廃棄物として処分されます。その発生汚泥の処分費は、処理施設管理費の60~70%を占める状況であり、製造外経費を圧迫することとなり、結局は製品の価格に跳ね返ってきます。また工場排水処理施設などの小規模施設から発生する汚泥に対しては、高いランニングコストや流通ルートの未整備などが制限要因となり、多くの企業が減量方法や再利用などを提案していますが、脱水処理の後処理はほとんどなされていないのが現状です。汚泥処理工程は、濃縮-消化-脱水-乾燥・焼却により概ね完結となりますが、消化工程に関しては処理に長時間掛かり、民間処理施設ではあまり採用されていません。また、水処理に膜分離活性汚泥法を採用している施設などでは濃縮工程を割愛して直接脱水する方法もみられます。
各地の食品工場から出る有機汚泥の集中処理を行い、汚泥中の有機物、窒素およびリンなどの成分を堆肥化して、肥料や土壌改良材として活用する等の計画もあり、今後の水からはじまる環境づくりの取り組みに注目したいと思います。
取材:芦内 裕実