生協組合員はゲノム編集食品をどうとらえる?(2023年3月19日)

古山みゆき

生活協同組合コープこうべ
古山みゆき

 ゲノム編集食品に対する消費者の受け止めはさまざまであり、「生協」でもその考え方、方針は一つではありません。
 地域生協のひとつ「コープこうべ」では、ゲノム編集食品については自主基準などによる特別な制限は行っていません。また、遺伝子組換え食品に対しても商品の安定的調達の視点から、排除することは行ってきていません。その前提として「食品としての安全性が確保されていること」です。
 生協は組合員組織であり、組合員の出資、運営、利用で成り立っている企業です。生協の事業運営の主体は“組合員の声”であり、商品の取り扱いについても、様々な場面・方法で組合員からの意見や要望をくみ取り、反映できるよう努力しています。

【コールセンターに寄せられた「声」】
 コープこうべくらしの情報センターには年間60~70万件のお申し出が集まります。ゲノム編集食品に対するご意見は2019年の届け出制度が発表された前後のお問い合わせが最も多く11件でした。その後は、年1件程度で、内容としてはコープこうべの取り扱い方針のお尋ねや「表示をしてほしい」「取り扱わないでほしい」といった内容です。一方、遺伝子組換え食品に対しては毎年20件程度のお問い合わせがあり、主な内容は「○○(特定の商品)には遺伝子組換え原料を使っているか」「遺伝子組換えでない××を扱ってほしい」といったもので、全体としては少数ではありますが、いずれも不安を感じてのお問い合わせです。

【学習会に参加した感想としての「声」】
 外部専門家の情報提供による学習の機会を得ることができました。ゲノム編集技術を利用した食品の開発に携わった研究者や規制当局で制度設計に関わられた研究者の方々から講義いただきました。受講者は、コープこうべの職員と組合員理事です。遺伝子に関する基礎知識から技術的なこと、安全性の確認方法、活用方法などについてわかりやすく説明をいただきました。質疑応答で理解を深めた後、グループに分かれ生産者・消費者・事業者それぞれの立場として、ゲノム編集技術を利用した食品についてディスカッションを行いました。
 グループ内でも「食べる」「食べない」の意見は分かれましたが、一つの答えにまとめ、グループ発表を行いました。事業者としてはメリットを感じるものの、消費者として不安は十分には払拭できないという結果となりました(表)

【遺伝子組換えの受け止めについて】
 遺伝子組換え食品について表示制度が変更になることを広報物でお知らせすることになり、組合員の受け止めを知る機会を得ました。
 機関紙に法律変更のお知らせとともに、改めて「遺伝子組換え作物とは」や表示制度についてもお伝えをしました。後日、感想が100通以上寄せられ、遺伝子組換え食品の表示制度について知らなかった(「でない」表示が任意であること)、遺伝子組換えの意味が理解できた、混入率5%について初めて知ったといった感想が多く寄せられました。
 表示制度が変更になることについては、「厳しくなるのはよい事」という意見がある一方で「わかりにくくなる」「細かく表示を分ける意味があるのか」「“でない”表示のものは流通しなくなるのでは」といった反対意見もありました。

 今回、異なる場面ごとに組合員からの「声」を集めてみました。くらしの情報センター(コールセンター)は、組合員が能動的に意見や要望を生協に伝えるという場面でもあるため、ゲノム編集食品や遺伝子組換え食品に限らず、食品添加物や残留農薬など、安全性に不安があり、慎重な立場の方がご意見を寄せる傾向にあります。特に不安を感じない方々は、意見表明されることはありませんので、コールセンターの意見から拾うことは困難です。
 一方で、少人数での学習会など情報提供と質疑応答など双方向のコミュニケーションの場では、疑問や不安の解決につながり、日常的に馴染みのない科学的な情報であっても受け入れやすくなるようです。実際、研究者の誠実さや熱意も参加者に伝わり、肯定的な受け止めも進んだように感じました。
 ただし、学習会に参加できる人数は限られていることから、機関紙やオンラインによる動画配信などによって、情報を伝えることも有効であることがわかりました。漠然とした不安も、情報(知識)によって考えが変わることもあります。
 今後、ゲノム編集食品の開発が進む中で、表示によって選択可能になれば「利用したい」というニーズも出てくるでしょう。
 新しい技術に対する「期待」と「不安」が交錯する中で、消費者も事業者も戸惑うことがないよう、正しい知識の習得は必須です。わかりやすい情報提供と専門家とのコミュニケーションが求められています。生協として、組合員に信頼され安心して利用いただけるように情報提供と学習の機会をこれからも提供していきたいと考えます。

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